第6話 奇襲
忘れる筈ない
何故なら俺は認知症などではないからだ
それよりももっと納得できる理由がある
奇形児は店主を殺した赤子人形だ…
水しぶきのようなものを店主目掛けて発射したかと思えば
店主は弾けたのだ
恐らく水圧で死んだのだろう
漫画にありがちな水の斬撃のようなものを発射したのだ
仇であると言っても過言ではない あの奇形児であるが 自分の番号とやらに対応していない可能性が十二分にあるのなら 話は別である
殺すなら自分に対応している番号の赤子「だけ」にしたい
いやむしろ
「だけ」にしたいというよりも「しか」無理と言うべきか
人間のような非力な生物があのような怪物を
ガチャ感覚で手当り次第に殺せる筈がない
戦闘は最小限に抑えるべきだし…
そうしたい…
そんな事を考えていると奇形児の姿が消えていた
一瞬悪寒が走る
瞬時に冷静さを取り戻す
あの手足の長さではここまで登ってくるには余程の時間が掛かるに違いない
そう自分に言い聞かせ志村の方に目をやると
右手の親指を顎の下に付け
落ち着きが無い貧乏ゆすりをしている
不安要素は勿論ある
それは俺も志村も同じであろう
いや、この状況に置いては俺の方がビビってるに違いない
志村は奇形児に気づいてない
選択しなくてはいけない
志村を
生かすか
それとも
殺すか
……………
その時
門(ゴールゲート)に勢いよく駆け込む1人の女性が見えた
ふいにそちらの方を見る
女性は門(ゴールゲート)に入る
すると、それに続けとばかりに1人の男が走ってくる
耐えられなくなった…
そうと捉えることしか出来ない様な形相であった
安堵の表情を浮かべ、ゴールした女性が後ろを振り返る
男は全速力で門(ゴールゲート)を目指す
しかし、その瞬間
門(ゴールゲート)が勢いよく閉まった
その轟音は俺が老体ならば心臓が止まっていたであろう
轟音に驚き低くした身をゆっくり持ち上げ窓の外を見る
すると、先程女を追いかけていた男が門(ゴールゲート)の前で何かを叫んでいる
閉め出された、門前払い、etc、様々な言葉が思い浮かび
自分のボキャブラリーの豊かさに感動していた
その時
叫び続ける男が何かに引きづられるように死角に消えていった
何引きづられたのかは正確には分からないが
恐らく彼と答え合わせをすることは出来ないだろう
どうやら1人が門(ゴールゲート)をくぐると
ものの数秒で門(ゴールゲート)が閉まり
無情にも入り遅れた者は
次の開門を待たなくてはならない様だ
不必要とも思える要素
少しでも多くの人間を殺したいようだ
……………
一瞬、そう一瞬
全ての感情が吹き飛んだ
その一瞬
大男の叫び声が聞こえてきた
志村!?脳にその名前が飛び込んできた
叫び声の理由は明確である
奇形児が登ってきた
想像よりも早かった
志村の無事を祈りつつ叫び声の方へ走る
瓦礫を飛び越え息を切らす
角を曲がる
ぐるっとあたりを見渡すと
血が流れているのが見えた
志村ぁぁぁ!!!
大声で叫ぶ
奥からぬぅと
何かが出てきた
しまった
奇形児に見つかった
終わった
もう
次は無い
後悔の念が魂のみならず
全身を覆う
やはり俺の予想は正しかった
志村は心強い仲間(モンスター)であった
苦笑いした志村が息絶えた奇形児をもって歩いてきた
どうやら、お得意の柔道技とやらで一撃だったようだ
志村はゆっくりと
そしてハッキリと
戯言を語りだした
「カ…カケル君
俺
この奇形児(あかちゃん)の技を使えるようになったみたい…」
疑問は後に確証に変わるが
もう少しあとの話
その頃
参加者唯一の外人が
8体の奇形児を皆殺しにしていた
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