第2話 般若の男

バシッ!


「い、いってぇ…」


つい声が漏れる 仕方が無い

不意打ちな上 これまで感じたことの無い衝撃であった


気絶する程では無いがもみじの手形がくっきり残ってるのは明白である


どんな大男がいるのか そう思いながら後ろを振り返ると、


露出の多い服を着た背の高い女性が立っていた


「だ、誰ですか!?」


至極当たり前の疑問が 感情よりも先に口から発っせられた




背の高い女性は不機嫌そうな顔でゆっくりと語りだす


「あぁ ごめんごめん 初対面だよね


ウチの可愛い可愛いレナを無視してる不届き者が

目に入ってさ… つい手が出ちゃったってわけ」


わけだと?理由になって無いだろ…


こっちの気も知らないクセに


こんな暴力女とは仲良くなれそうに無い…


「だ、ダメですよ!アイミさん!

カケルくんまだ目を覚ましたばかりなんですから!」



突然のレナの大声に俺と暴力女は驚いた


弱々しくも相手を叱責しっせきするために放ったレナの声


それは 可愛い という感情以外を消し去さった


それは、彼女の真剣な表情が

俺のために怒ってくれている、

そんな事を物語っているようにも見えたからであろう


「悪かったよぉ レナぁ ごめんねっ

後でケーキ奢おごるから ゆるしてぇ~ ね♡」


アイミ と呼ばれていた暴力女が甘い声をあげる


少し薄気味悪さも感じたが… まぁいい

そういう人も世の中にはいるだろう


彼女と暴力女がねっとりと絡みだした


思わず目を逸らす


………


逸らしたついでにあたりを見渡すと

背の高い建造物ビルのみが立ち並んでいる


………


まぁ自分の夢にケチつけるのもおかしな話ではあるが

なんというか全体的に特徴が無い建物ばかりだ

三流大学通いの貧相な発想力じゃこんなもんなのだろう


しかし、見る人が見れば感動するのだろう…


しないのかな?


まぁ自分には関係ないか、

いつもの様に そんな投げやりなことを考えていると

遠くから男の野太い声が聞こえてきた




「おいおい なんなんだここは

店の仕込みがあるってのに冗談じゃねぇぞ!」


聞き馴染なじみのある声が巨大な門に対して怒鳴り散らしている

あれは、小学生のころレナと迷子になった雪の日

母さんが迎えに来てくれるまで預かってくれていた

飲食店の店主だ


昔より少し太ったな

そんなどうでもいいことを考える…


しばらくすると 苛立つ店主が見つめる門が

ゴォォォ と、音をたてながら開く


門の奥は深い黒一色 しかし目を凝らすと何かが見える


般若の面を被った小柄な中年男性、

そして、その後ろには四肢の短い未発達な赤子の人形が 数十体、闇の中からゆっくりと出てきた


その不気味な形相に俺やレナ、暴力女、店主に加え、 俺たちと同じ境遇であると思われる数十名の人間の視線は釘付けとなった


『ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、むぅ、なぁ

うん、全員無事に入はいれてるね 全部で50人♪』


鼻歌交じりに中年男性が喋り出した


人数を数える意味は分からないが夢なら早く覚めて欲しい

あの人形を見てると吐き気がしてくる


『ルール説明とかパパッとでいいっしょ

えーとまずは…』


ルール?何を言ってるんだ?

俺の夢だぞ 勝手なことを言うな


行動や言動の薄気味の悪さは暴力女とはるな…


………


声に出てしまっていないかと不安になり2人の方を向く


特にこの不可解な状況に興味は無いようだ、

これまで通り2人で絡んでいる


そんな2人を見てると何だか体の力が抜けてきた

拍子抜け、というやつなのだろうか


「おい!あんた!

ここはどこなんだよ!いい加減出してくれねぇかな!

かれこれ3時間だぜ!」


そう怒鳴りながら怒りが振り切れた店主が一歩前進

すると、中年男性は体をくねくねしながら喋り出す


『ちょっとぉ!

まだ説明半分なんだから落ち着いてよ!』


「説明なんていらねぇだろ!

帰らせてもらうぜ!そこ退けっ!」


店主が 怪物を押しのけ門に入っていく



その瞬間店主の体は勢いよく弾けた


周辺に肉塊と血液、そして謎の水しぶきが飛び散った

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