第37話
長い! こいつは一体いつまで話を続ける気だ?
ジェロニモ一味を除く全員がそう思っていた。
先刻から尿意を必死で耐えている者が相当数いた。
ついに我慢しきれなくなった者が声をあげた。
「すいませんっ! トイレに行きたいんですがっ!」
「やかましいっ! ションベンならその辺でしろっ! 糞は我慢せい! 無理ならしてもいいがな」
最後の
出入口には人間とは思えないジェロニモの十二人の手下がいるからできれば誰も近づきたくはなかったが、彼らの込み上げる尿意が恐怖に勝ったのだった。
ジェロニモは案外
「俺たちは予定を早めてその夜のうちに逃げるように次の目的地に向けて移動を開始した。もちろん山の中をだ。はぐれないように互いの体を
ジェロニモの声は高ぶり、その目はうっすらと潤んでいた。
完全に自分に酔っていた。
「ちょい待ち。おいジェロニモ、おまえ仲間の一人を食ったって言ったよなぁ。それも隕石に触ったうちの一人をよ。今の話と完全に矛盾するだろ。ていうか、その流れで行くとおまえ外道じゃん」
Tが細かい突っ込みを入れた。
最後の一言が明らかに余計だった。
や、やめてくりぇ~っ! これ以上話を長引かすようなことは言わんでくりぇ~っ!
……招待客全員がそう思ったのは言うまでもない。
一瞬
「仕方がなかったのだ! 俺には誰よりも強い力が必要なのだ! この腐りきった世の中を正すためにな! あいつはそのための尊い犠牲になったのだ! Tよ、おまえにはそこのところが全くわかっていない。そこだけは話しておかねばならん。いいから黙って聞け。隕石事件から一週間後、万野漫子たち幹部一党は避暑から戻り、俺たちは普段通りの漂泊生活に戻っていた。だが決定的に以前と違う点があった。隕石に触った俺たち九人は大人たちを全く恐れなくなっていたのだ。きっかけはさっき話した強行軍の最中に起きた、俺たち全員による、指導員への集団リンチだった。代わる代わる仲間を担いで歩く俺たちに対し何もしない指導員に、ついに俺たち全員の
Tを除く招待客は、先程からジェロニモの話に突っ込みを入れたくて仕方がなかった。
おいジェロニモ、おまえは約四年前の話をしているんだよな? ──そのとき九歳だっただと? 計算が合わないだろ! ジェロニモ、おまえはどう見たって二十歳はいってるだろうが! と。
招待客たちの口には出さない突っ込みに対する答えを、このあとジェロニモは語ることになる。
だが、それを聞いたところで誰一人として到底理解できる話ではなかった。
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