第26話
集金人の両掌と顔が乳房の目の前に来た。
「いきますよ」
言うなり両乳房は強く掴みしめられ左乳首に吸い付かれた。
強烈な吸引が始まった。
全身に鳥肌が立つ。
「うあああああああ」
だが無駄だった。
牛の乳を
不覚にも下の口は涎を流している。
集金人の口が左乳首から離れた。
「リナ、リナ。約束通り下の口にもぶち込んであげますね」
ズブリという感覚とともに熱いモノが侵入してきた。
集金人のシンボルだ。
右乳首に吸い付かれた。
猛烈に乳首を吸い立てながらガンガン腰を振り、狂ったように突いてくる。
三十分近くが経過した。
乳房の内部から何かが乳首に向かって集まってくる。
「あっ! あっ! ああっ!」
集金人の喉がゴクゴク音を立てている。
メチャクチャに揉まれている左乳房の、親指と人差し指で
スプリンクラーのように噴き出している。
女体の神秘だった。
子を産んだことのない雌犬が、捨て子猫の親代わりになって自らの乳房を含ませていると母乳を出すことがある。
それに似ていた。
リナの場合は母性本能が刺激されたというよりも激烈に乳腺が刺激されたせいだろう。
「んむぅ……ついに……母乳を出しましたねぇ……グビッ……初めてにしては……甘くて美味しいですよ……ぶちゅううう」
リナは上下に揺さぶられながら虚ろな目で天井を見つめ、鼻水と涎を垂れ流している。
「ユアマジスティと言いなさい」
「ユア……?」
「ユアマジスティ。さぁ言いなさい」
「ユ……ユア……マジスティ」
「もっと。何回も。大声で。イクまで言い続けなさい」
「ユアマジスティ……ユアマジスティ……!」
集金人の飲乳、搾乳、ピストン運動の三点責めがヒートアップしていく。
「おっ! おおっ! ユウアマジィステイ……!ユウアマジィステイィィィイッ!」
集金人の腰の上でガクンガクンと仰け反る。
ユアマジスティが何なのかわからないまま、リナは、稲妻に引き裂かれるように──イッた。
集金人は意識を失ったリナを床に寝かせた。
「なかなかよかったぜ。糞洩らし馬鹿女にしてはな」
口調が変わるとともにその姿も変化を始めた。
「あと二十三ヶ所か」
そう言うやTに戻ったばかりのその姿は透明になっていった。
完全防音の建物内にいながら、遠くで正午の時報が鳴っているのを、常人離れしたその聴覚がとらえていた。
日付が変わるまでの間に、Tは荒異に宣言した通り、都内二十三ヶ所にある蛮神会系の組事務所で
連絡が取れないことを不審に思った枝の事務所が寄越した組員たちが本部の惨劇を知ったのは、Tが姿を消して間もなくだった。
直ちに警察に通報され、系列の組事務所にも連絡がいった。
それが蛮神会にとっての不幸であり、Tの計算通りの展開だった。
蛮神会が何者かの襲撃を受けている──緊急招集がかけられ、
それら組員たち──合計九百三十七人が、見えない襲撃者──Tにより、それぞれの頭に四つの穴を開けられたのだ。
最初の本部の犠牲者も含めるとその数は九百五十五人になった。
犯行現場に影も形も見せない姿なき犯人の鮮やかな手並みによる前代未聞の大事件──
東京だけでなく日本全土が眠りを忘れたようだった。
都内の主だったヤクザ事務所の前には
魔獄会にも一個小隊十六名がやって来た。
誰も表の機動隊に気をとられる者はなく、魔獄とヤスは会長室で、それ以外の者は組員用の詰め所にあるテレビの画面に食い入っていた。
おそらく日本中でこの男たちだけだったろう、蛮神会襲撃犯の正体に薄々勘付いていたのは。
魔獄ははっきり知っていた──襲撃犯がTであることを。
「九百五十五人か。終わったな、蛮神会」
「会長、これって……」
「ああ、Tだ」
「マ、マジすか!?」
「ああ。だが誰にも言うなよ? あいつらにもだ。もっとも感のいい奴は気付いてるかも知れんが……」
「気付いて……いると思いますよ、あいつらも……」
魔獄会の組員たちがTの超人的な強さを見せつけられたのは、つい昨日のことなのだ。あの場にいた者なら誰でもTを連想するに決まっている。
「し、しかかかし……会長はそう仰いますが、さすがにちょっと信じられませんね……いくら何でもこれ全部をTの兄貴一人でやったなんて……仲間がいるんじゃないですか?」
「ヤスよぉ、おめえは
「え、ええ、仰る通りで……」
「ゆんべ奴と飯食ったときも色々と話したんだが、はっきりとは言わなかったが、奴は今月日本に帰ってくるまでの三年間、どうやら世界中の紛争地帯で傭兵をやっていたらしい」
「傭兵ですか」
「おうよ。だがそれくらいならそれほど驚くこともない。ヤクザだって傭兵を雇うこともあるし、傭兵上がりの組員抱えてる組もあるしな」
ヤスは考え込むように黙っている。
もちろん考えるふりをしているだけだ。
魔獄は続ける。
「それでも奴が、Tが傭兵時代の仲間と蛮神会を襲撃した、とは俺は思わん。傭兵だったときも今も、Tが誰かと組んで仕事をするような奴とは思えねえんだよ。それにな──」
魔獄は立ち上がると冷蔵庫から白い液体が入った二リットル容器を持ち出してきた。
組員たちには知り合いの酪農家から特別に分けてもらっている新鮮な牛乳と言ってあったが、中身はトヨの母乳だった。
「ぷはぁ~っ! うめえぇ!」
それがトヨの母乳だとは知らない組員たちには、魔獄が何故そこまで牛乳好きなのか不思議だった。
魔獄はトヨの母乳を一気飲みしながら、昨夜のTとの乳兄弟の契りを思い出していた。
自然と顔がほころんでくる。
ニヤケ
「へへっ。俺は、へへへ。奴は──Tは人間じゃないと思う──うえっへへぇ……」
「え」
「へへ……奴はバケモンだ。ひひ。俺は一目見た相手の力量はだいたいわかる。それが俺が一代でここまで来れた理由の一つだ。T──あいつには、底が見えねえ。ひひひゃ」
「そんな、会長──」
そこまで言うかとヤスは思った。
「うふう。俺はあいつといるとき、虎をペットにしてるようなスリルを感じるんだよ。可愛いと思うと同時に、何かの弾みで簡単に殺されるかもしれないっていうような。ほひっ」
魔獄の
「うひ、うひひ、うへひほへひひゃー」
……なんか思い出して笑ってるよ……会長、まさかそっちの気があるんじゃ……いや、そんな話は噂でも聞いたことがねえ。クスリか? いや、会長はクスリを売っても自分でやることはねえ。ヤクは売っても打つんじゃねえ、会長の
魔獄の話は聞き手が小学生でも納得するものではなかったが、ヤスはそれ以上疑問を口にするのをやめた。
親が黒いと言ったらピンクの乳首も黒乳首、それがヤクザだ。
「さ、今日はもう寝るか。なんてったって機動隊が守ってくれてるんだ。今夜はぐっすり眠れそうだぜ」
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