第23話
「そういやお兄さんの名前まだ聞いてなかったな。名前なんてんだい?」
「T」
「てぃー? 変わった名前だな、ひょっとして外人さんか?」
「いや、日本人だよ」
「ふうん。なるほど。お兄さんの名前はてぃーか。よし、T、飯食いに行こうや」
魔獄はTを自分の縄張りにある高級中華料理店に連れて行った。
店は五階建てのビルの二階にあった。
店に着くなり貸し切りにした。
Tと魔獄とトヨを残して、供の組員五人を階下に待機させた。
予想通り出てきたのは満漢全席だった。
三人とも大食だったから問題なかった。
数時間かけて食事をしながら、Tと魔獄はいろんな話をした。
どう見ても二十歳なのに、Tの口から語られる博識に魔獄は舌を巻いた。
Tも魔獄が当初思っていたより遥かに知的で常識のある人物とわかり心の態度を改めた。
昨夜、魔獄を襲った男たちは自来也(じらいや)組の系列の者だった。
「あいつら自来也組だったんだ」
「十七年前に蛮神(ばんじん)会が自来也組の傘下に入ったろ。そいつらだ」
自来也組──日本人なら幼稚園児でも知っている日本最大最強の暴力団で、関西を本拠として全国に拠点があった。
かつては関東ヤクザで団結してその侵攻を防いでいたが、度重なる執拗な切り崩しに遭い、今や東京もすっかり自来也組の勢力下にあった。
「あいつら俺のシマで商売してやがってよ。それも人身売買だぜ。舐めやがって。そこをぶっ潰したときこのトヨを見つけたのよ」
トヨは世界中の金持ちに売りつけられる女たちの一人だった。
ある日トヨは
初めて見る高級ブティック店に入った。
ブラジャーの試着のとき女性店員に背後からクロロフォルムの染み込んだ布で鼻と口を覆われた。
気づいたときは二十人ほどの女たちとどこかの地下に監禁されていた。
海外に売り飛ばす女たちを拉致するための、自来也組の息のかかった店に入ってしまったのだった。
捕らえられた女たちはイメージビデオを撮らされ、それを観た金持ちたちにネットオークションで
トヨは外人モデル並みの美貌とスタイルに豊満なボディー、その上子供を産んだばかりのパンパンに張った乳房に無尽蔵の母乳を蓄えた上玉中の上玉だったので、組員たちは味見を厳禁されていた。
体に傷一つ付いただけで値段が変わってくるのだ。
捕まって早々、トヨもイメージビデオを撮らされた。
全裸で、または変態的な衣装を着せられ、あらゆる
大人の男が喜ぶいやらしい言葉を言わされもした。
母乳マニア
内容の九割は母乳マニアの嗜好に合わせたものだった。
盛大に母乳を撒き散らし、早く母乳を飲んでほしいと我が子を求めて泣き叫び
「坊や! 私の愛しい坊や! どこにいるのっ! 早くっ! ママのパンパンに張ったおっぱいに吸い付いてっ! ママの栄養満点の母乳! 全部ぅ! 愛しいあなたのために溜めてるのよっ! お願いぃ! これ以上焦らさないでぇ! 早く飲んでっ! 全部飲み干してっ! ママのおっぱい楽にしてぇっ! ママを気持ちよくしてぇっ!」
真っ赤なサテンのシーツのキングサイズのダブルベッドの上で、真っ白い裸身をのたうち回らせながら、カメラに向かって、自分の手に余る巨大な乳房を掴みしめ噴乳させられ絶叫させられたのだ。
監禁されてから二週間が経ったとき、突然沸き上がった怒号とともに数人の男たちが
自分のシマを荒らされたことを知った魔獄会の組員たちだった。
救出された女たちは魔獄会の系列の店に所属することになった。
トヨだけは品定めのときに魔獄に一目で気に入られ、彼の愛人にされたのだった。
押収したトヨのイメージビデオは魔獄の秘蔵コレクションに加えられた。
一応、魔獄は一旦トヨを自宅に帰してやった。
トヨという女を知った以上、必ずモノにする気だったが、最初は善人ぶることにしたのだ。
たった二週間でトヨの義実家は激変していた。
捕まったその日に、トヨは家族に当てた偽の絶縁状を書かされていた──他に男ができたので家を出ていくと。
トヨにゾッコンだった夫はそれを真に受けて一週間後ビルから飛び降り自殺した。
舅姑は子供をトヨに引き渡すのを拒絶した。
トヨに向かって、おまえのせいで息子は死んだ、息子を返せと
話の通じる状態ではなかった。
泣く泣くトヨは子供を取り返すのを諦めた。
それらのことは
触れなば落ちんと言った風に魔獄はトヨを手に入れた。
いずれ必ず子供は取り返してやるから、当面は魔獄の乳母になれと口説いたのだ。
当面とは、魔獄がトヨに厭きるまでを意味した。
トヨのリミットレスの母乳は、魔獄が飲むことになった。
魔獄もまた、超のつく母乳マニアだった。
そういった話まで、トヨが同席しているのも構わず、魔獄はTに明け透けに語って聞かせたのだった。
トヨの手前さすがに「当面」の意味だけは黙っていたが、Tには漏れなく伝わっていた。
類は友を呼ぶとは本当だった。
Tは魔獄も自分に劣らない母乳マニアだと知って、ますます親近感が沸いていた。
魔獄は五十歳、Tの実年齢より三つ上だが、精神年齢はTと同じく中一レベルだった。
いつの間にかTは魔獄をおやっさんと呼んでいて、その口調には一切の遠慮がなくなっていた。
「おやっさん、蛮神会だっけ、自来也組の系列に入った──そこ潰してやるよ。ごちそうになったお礼だ」
「なんだとっ、T、おめえ……」
「気を悪くしたかい? 出しゃばった口を利いて……」
「そんなこたぁねえさ。嬉しいよ。でも潰すったってなぁ……まさかとは思うが、それおめえ一人でやるってのか?」
「オレ一人でだよ」
「まぁ、おめえの凄さは目の前で見てるからよく知ってるけどよ、ほんとに一人で大丈夫か?」
「任せときなって」
「…………」
魔獄はTの目を真っ直ぐに見つめる。
Tも摩周湖のように澄んだ瞳で魔獄を見つめ返す。
事情を知らない者が見たら勘違いしそうな雰囲気だった。
やおら魔獄は自身の右腿をポーンと叩いた。
「よっしゃ! 俺はおめえを信じるぜぇ! 万が一のときゃ、骨は俺が拾ってやる。心配すんな。そこでと言っちゃなんだがT! 俺は今ここでおめえと固めの
「ああ、いいよ」
「よしっ、決まった! T! 俺とおめえに相応しいとっておきの固めの盃を思いついたぜ。トヨっ! 脱げっ!」
「!?」
言われたトヨも、聞いたTも、一瞬不思議そうな顔をしたが、お互いすぐに理解したようだった。
にっこりと微笑むとトヨは体にぴったり張り付いたラメ入りの真っ赤なミニスカドレスを胸元から一気に引き下ろした。
ブルルルルウン!
という音が聞こえた気がした。
Tに食い入るように見つめられて恥ずかしいのか、トヨの顔は真っ赤に上気している。
「そうだぜ、T。俺たちは今からこのトヨの母乳を一緒に飲み干すのよ。俺とおめえは義兄弟ならぬ
魔獄が言い終わらないうちにTはトヨの右乳首に吸い付き猛烈な吸飲を開始した。
「おっとこいつは一本取られたぜ」
すぐさま魔獄もトヨの左乳首に吸い付いた。
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