第5話
「これから修行をするにあたって、私は廻理の師匠となる。私のことは師匠と呼べ!」
と絵に書いたような展開が廻理の前で起きる。
なかなかぶっ飛んだ師匠が出来てしまったような気がするが、気にしたら負けだと思い考えないことにする。
ここでこれまでの話を頭で考えて疑問に思ったことを質問する。
「そういえば、巫女がいないと霊異を倒せないって言ってましたけど俺が霊断士になった場合は、どうなるんですか?」
まさか自分も師匠と同じように一人二役になるのかとも考える。
「いや、君は男だから巫女にはなれないんだ。だから、大抵の場合は巫女が派遣されるという形になる」
「それなら安心です。戦いに集中出来そうですね」
巫女の祈りなんかも覚えることになってたら大変だ。あんまり覚えるのは得意じゃない。
「だがな、巫女は私の様に戦闘が出来ると言うわけじゃないから霊断士が守りながら戦う必要があることを覚えておくんだ」
やはり師匠の例はかなりあてにならないことがわかった。しっかり学んでいく必要がありそうだ。
「それで、霊断士になるためにはどんな修行をしたら良いんですか?」
「そうだね、まずはとにかく体力をつけることが大事だ。廻理は、これまで部活とかはやってたのかい?」
「いいえ、帰宅部でしたし体育の授業とかで少し身体を動かす程度でした」
霊断士に体力は必須だよな。じゃないとあんな化け物に勝てるはずがない。
「それじゃあ厳しめにしていかないとだな…受験でさらに体力は落ちているだろうしね」
師匠の表情がかなりヤバイ顔になっている。なにやらニヤニヤしていて嫌な予感だ。
「今日の夜から修行を始めるぞ。場所はあの公園に集合、時間は深夜0時だ。1番高いケーキを食べたんだ、みっちりしごいてやる」
これまた厳しい時間に修行をすることになった。あとケーキのこと根に持ってるのか…
ホテルでベッドに横になりながら廻理は憂鬱な気分になっていた。
「深夜とか絶対に眠くなるよな…」
よっぽどのことがない限りそんな時間まで起きていたことはない。
夜に向けて寝ておくことにするのだった。
「こんばんは、廻理。さて修行を始めていくのだが…まずは準備運動が必要だ。でないと骨が折れてしまうこともあるからね」
深夜0時、廻理は師匠である叶絵と合流し修行を開始しようとしていた。
「大事ですよね。準備運動」
と言いながら廻理は屈伸から始める。
「さて、身体を動かしていくぞ。ランニングだ、付いて来い」
と言い師匠が走り出す。
「はい!」
廻理もすぐに師匠を追って走り始める。
少し走ると脚が痛くなりペースも落ちる。
「まだ1キロも走ってないぞ?運動は随分と久しぶりのようだな」
「はぁ、はぁ…受験勉強とかで…なんも…はぁ…やってなかったですから…ね」
喋るのもかなり大変だ。自分はこんなにも体力がなかったのかと実感する。
それからどれだけ走ったかわからないが、川辺に来て休憩に入る。師匠は、汗ひとつかいていない。
「これくらいの距離は、普通に走れなければ霊断士にはなれないからな。体力がなければ霊気を使いこなすことも不可能だ」
ここで、霊断士ワードが出てきたようだ。
「師匠、霊気とは何ですか?」
先生に質問するかのように手をあげる。
「ふむ、まだ早いが説明だけしておこうか…霊気というのはな普通の人の目には見えないが確かに存在するものだ。空気とでも思ってくれると良いな」
そんなものが存在するのかと思いつつ、その霊気とやらがどう役立つのかが気になった。
「それで霊気を使いこなすってのはどういうことですか?」
「簡単に言えば身体能力を強化してくれるものだ。霊気を身体に取り入れて、自分自身を強くする。そうしないと霊異とは戦えないからな」
身体能力の強化とはこれまた現実的じゃないものが出てきた気がする。でもそれを習得すればかなり強そうだと思う。
「そうだな、せっかくだから実際に見せてやろう」
と言いながら師匠が川に向かう。
「何をするんですか?」
「まぁ見ておけ。今、私の右腕には霊気が纏っているんだが、それを川に向かって…」
師匠が右腕を軽く振るった瞬間、20メートル程の幅のある川の廻理達がいる側から向こう岸まで水が弾け飛び、人が通れるくらいになった。
「うそ…」
廻理は驚きで固まる。
モーセじゃあるまいしなんて口に出す余裕もない。
「体力をつけて霊気を纏うことを極めれば、お前にも簡単に出来ることだ」
と言い師匠はニヤッと笑った。
自分にも出来ると言う発言から廻理は、修行にかなりの気合が入るのを自分で感じた。
「俺もいつかやってやるぞ!」
と言い走り出す。
「全く、調子の良い奴だ」
師匠は、そう言いながらも走り出す。
廻理が霊断士になるための険しい道がスタートしたのだった。
まだ厳しい修行は始まったばかり…
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