第4話

「はぁ、やっぱり夢とかじゃないよな…」


朝起きた廻理は、起きて早々にため息をつく。廻理は、すぐさまスマホを開き電話帳を確認する。


「あるよな…春神叶絵、夢じゃないよな」


昨日出会った女性の名前はしっかりと記入されていた。


現在の時刻は、朝の8時30分だった。


「急がないと朝食の時間が終わってしまうな…」


あんなことがあってもお腹は空く。意外と自分はメンタルが強いのかなと自画自賛する。



フロントに降りて、食堂に入る。ご飯は、バイキング形式だった。


ほかの利用者の話なんかに耳をすましてみるが、事件が起こったとかの話は聞こえてこない。まだ話が流れてないのか、もみ消したとかなのかなと考えておく。


「ふぅ、お腹いっぱいだな。さて、今日はどうしたものか…」


部屋に戻りつつ今日の予定を考えているとスマホに電話が入る。


電話してきたのは、春神叶絵だった。


『やあ、おはよう。あの後は良く眠れたかな?早速だが、今日会えないか?』


「おはようございます。はい、大丈夫ですよ。どこで合流したらいいですか?」


『うむ、そうだな。昨日の公園で良いか?厳しいなら別の場所にするが』


「いえ、大丈夫です」


『そうか、わかった。では、1時間後に会うとしよう。おっと、勘違いするなよ?これは、デートの誘いではないからな』


「わかってますわ…」


この人は、こんな性格だったな…これは、大変な1日になりそうだ…


『面倒くさいなんて思ってないかね?』


うひゃ、バレてるよ…


「そんなことないですよ?では、また後で」


ボロが出る前に電話を切る。



部屋に戻り、急いで着替えをする。


「時間に遅刻したら何をされるかわからないな…」



早めにホテルを出て、待ち合わせの公園に向かう。外は、寒いためコートを着用している。道を歩く人もどこか急いでいるようだ。


「早く着いてしまったな…暇つぶしでもしとくか」


まだ時間には20分ほど余裕がある。


ゲームをしながらのんびりと時間が過ぎるのを待つ。


「これはこれは、待たせてしまったかな?」


と言いながら叶絵が歩いてくる。


「いえ、そんなに待ってないですよ」

ずっと待ってたとか言えるわけがない。


「そうか?20分前に着いてずっと待っていたから、かなりやる気があるなと思っていたのだが…私の気のせいだったか」


見てたのかよ!だったら速く出てこいよ。と廻理は心の中で叫ぶ。


「合流したことだし、場所を移そうか。のんびり話せるカフェがあるんだ」


と言って叶絵は歩き始める。




叶絵に連れて来られたのは、お洒落なカフェという印象のある店だった。


廻理は、このような店に少し憧れがあったため心の中ではウキウキしていた。


「お金は、私が持とう。好きなものを注文すると良い」


と叶絵が言う。



結果、廻理は1番高いケーキを注文する。


少しは仕返しにならないかという思いもあったが、叶絵にダメージが入っている様子はないようだった。




「さて、話を始めるとしようか」


と言いながら叶絵は、バッグから紙のようなものを取り出し、机におく。


「それは何ですか?」


何やら紋章の様なものが書かれていて気になったので質問した。


「ああ、これはお札だよ。周りに私たちの会話の内容が聞こえない様にするものさ。周りは、私たちが世間話をしていると錯覚しているよ」


「へー、そうなんですか」


なんか、いきなりとんでもないもの出して来たよ!ここは、ゲームの世界じゃないのになんて物出してんだ。


廻理の心の中はいきなりパニックだ。


「おや、いきなり過ぎて頭がついて来ないか…」


順番を間違えたか…というように叶絵が頭を掻く。


「なんなんですか、その便利アイテムは?霊断士ってそんな物も持ってるんですか?」


「まぁ厳密に言えばこれはな、巫女の道具なんだ。巫女の力で創り出すことが出来る代物でな、霊断士には、作れないだろうな」


「巫女?巫女ってあの?」


「まぁ概ね間違いではないがな」




「霊断士は、霊異に対して攻撃しダメージを与えることは出来るがトドメを刺すことは出来ないんだ。そのために存在するのが巫女という。彼女らの祈りは唯一霊異にトドメを刺すことが可能なのだ」


「でも叶絵さんは、霊断士なんですよね?昨日は、1人で戦っていたような…」


「ああ、私は1人で戦えるからな。霊断士兼巫女というやつだ」


「それって珍しいですか?」


「ああ、そうだね。そんなにいないだろうな。両方をやるなんてことは、そうそう考えないだろう」


叶絵は、中々すごいということになるのだろう。1級霊断士とか言ってたし…


「霊断士には、階級というものがあり私は、一応1級だ。上がり方は、最初に実力を試してスタートの階級が決められる。まぁ、誰もが5級だかな。後は漢検とか英検とかと上がり方は一緒だ」


えらくわかりやすい階級の説明だった。


「1級が1番高いんですか?」


「ああ、その通り。大抵は、良くて2級だな。だが突出した実力を持った者が時々現れ1級を取得出来る」


ということは、叶絵はかなりの実力者だ。


「それで、これから霊断士になるためにはどうしたら良いんですか?」


いきなり霊異と戦わされたらたまったものじゃない。


「そうだね。まずは修行だな!人間という枠組みに囚われていては霊異とはとてもじゃないが戦えない。まずは、自らの力を解放しなければならないんだ」


人間じゃダメときた…俺は、やっていけるのだろうか?廻理の頭には不安しか浮かばない。


「なーに、心配する必要は全くないぞ!1級霊断士である私が教えるのだからな」


逆に不安しか感じねぇよとは、口が裂けても言えない廻理だった。

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