第十二章 対峙する
「お断りだね」
俺ははっきりそう一ノ瀬に返事をした。
「マヤの気持ちは? 譲るとか譲らないとか。違うんじゃねえの?」
「俺は山本さんとマヤさんが恋人同士だって信じてません」
この一ノ瀬の発言には俺とマヤがびっくりした。
なんだ、一ノ瀬もなかなかに鋭いな。
「
へえ。
俺は素直に一ノ瀬に感心していた。
マヤが俺の服の裾ををぎゅうっと握る。
不安そうなマヤの顔を見たら俺は直ちに一蹴するべきだと思ってズカズカと大股で一ノ瀬に歩み寄った。
「山本さん、俺と勝負して下さい!」
「しねぇよ、勝負なんて」
「はっ?」
「マヤと付き合ってから日が浅いから俺達が
精一杯に凄みをきかせて怒りを込めたつもりだ。
睨み合う俺と一ノ瀬だったがとうとう折れた。
「すいませんでしたっ」
一礼して駆け足で去って行く一ノ瀬に少し同情心が芽生えたが、あいつにうろつかれたらマヤが困るだろう。
はっきりと断ってこれで良かったんだ。
「ヒカルさん」
「断った。マヤは俺の女だからって」
「ありがとう」
「
マヤはピッタリ俺に寄り添って腕をまた組んで来た。
もう一ノ瀬いねえけど?
まっ、いっか。
悪くないな。
俺はマヤとゴン太と一緒に帰る道で鼻歌を歌いだしたくなっていた。
「ヒカルさんが良い」
「んっ?」
マヤの頬が赤らむのを俺は見過ごさなかったが黙っていた。
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