第九章 花火

 俺は仕事帰りに二人でやりきれないぐらいの花火をスーパーの袋にいっぱい買って来た。


 晩飯を食っていたら夕立ちが降り出してなかなかやまない。


「せっかく花火をマヤとやろうと思ったのに」


 俺はゴン太を玄関に連れて来てタオルでゴシゴシ雨で濡れた体を拭いてやる。

 玄関のたたきにすのことバスマットを敷いてやる。


 ゴン太は聞き分けの良い賢い犬でよっぽどの時以外は部屋には上がり込んだりしない。


 俺がうなされているとゴン太は心配して寝床に来て慰めてくれたりするぐらいだ。


 うなされることもマヤがうちに来てからだいぶ減ったと思う。



 今日も自然にマヤと俺は同じベッドで寝た。

 どちらともなく流れるようにベッドに身を横たえる。

 

 俺はやっぱりあの部屋には寄り付けずにいた。

 いつか金が貯まったら家をぶち壊してこじんまりとした家に建て替えたいと叶いもしない夢を見た。


 俺のボーナスもない安月給では金は貯まらないし毎日食ってくだけで精一杯だ。



 マヤとは男女の関係になるような間違いはない。

 恋人ごっこをしているが恋人のするようなことはしていない。


 一緒に抱き合い寝ることが続いても親子みたいなハグ。

 二人して安心して互いの体温を抱いて眠る。


 まるで心を持った抱き枕を抱いているかのよう。


「花火は明日だな」

「うん」


 マヤはいつまでいてくれるんだろうか?

 ふとそんな事が胸をよぎっていった。







 

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