第49話 禰宜は本島、小松菜も本島
朝の日供祭を終えると、発光をおねだりされた太一は、しっかり4回発光した。そして、眠い目をこすって本島家へと急いだ。4本の動画を携えていたが、その中にはまりえの自撮り動画もあった。
「あらいやだ。また来たの……。」
「連日、お騒がせして、申し訳ございません」
本島家に着くと、本島のお母さんの態度は太一にとって意外なものだった。昨日は歓迎ムードもあったが、今日は全くない。そればかりか迷惑がっている節さえあった。昨日が糠喜びだっただけに、太一への期待が大きく下がっているのだ。
「雄大、また来たよ!」
「……。」
太一は気にもせずに本島の部屋の前に陣取り、何度も声をかけた。だが、相変わらず返事がない。そのうちに、本島のお母さんが文句を言ってきた。
「もう、辞めてちょうだい!」
わんわん泣きながら、太一を睨みつけてさらに続けた。
「あなたが悪いんでしょ。全部、あなたが……。」
「おばさん……。」
本島がひきこもった理由を母親が知らないはずはない。それ以前の付き合いもあるから昨日は昨日の態度だった。だが、努力しても報われないというのは、努力しないよりもかえって辛いこともある。太一が本島にはなし掛ければはなし掛けるほど、痛々しさが増す。まるで、全ては我が息子が悪いと言われているようで、腹も立つのだ。そんな本島のお母さんの気持ちをようやく察して、太一は引き上げることにした。
中にいた本島は、何度もはなしかけてきた太一に少しずつ心を開いていて、何かのきっかけがあれば部屋を飛び出していてもおかしくない気持ちだった。それまで我慢できないのが親心というものだから、誰が悪いということはない。
「おばさん、お世話になりました。もう、来ませんから」
太一は本島の母親に正対し、深々と頭を下げた。そして、本島がいるであろう方を向いて、最後にビデオメッセージがあることを告げた。
「今、メールで送ったから、見れるときに見て欲しい」
太一は3通のメールを送った。用意していた動画は4本あったが、1本は送らないことにしたのだ。そのあとは、何も言わずにゆっくりと部屋の前を去った。
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