第43話 こいばな

「それにしても濃いメンバーが揃ってるわね」

「異国の継嗣王女、世界一の大富豪の孫娘、元天才子役、金魚!」

「あとは大統領の娘くらいなものね」

「ま、天才ハッカーというのもアリっしょ!」


 巫女たちの話題は次第に恋バナ、太一のことになる。


「アイリスはどうして巫女になろうと思ったの?」

「そうですよね。働かなくっても良いお立場なんですもの」

「最初はこの街に住みたかっただけなの。私はオタクだから」

「そんなこと言って、本当はマスターの不思議な光が目当てなんでしょう!」


 太一は気を回して、少し距離を取り、巫女たちの視界から消える。


「正直言って、それに近いものがあるわ……。」

「やけに素直じゃない。で、いつマスターを誘惑するつもりなの」

「誘惑だなんて、そんな……。けど、気持ちイイー! ものは気持ちイイー! わ」

「そう言うあおいは、どうして巫女になったの?」

「私は、御護りを返しに来たら、巫女やらないかって誘われただけよ」


 そう言いながら、あおいは証拠の品、御護りをみんなに見せた。


「『太夫』って何?」

「あっ、これはね、昔出演した映画の役の名前なのよ」

「知ってる。それって随分前の映画でしょう。その頃から光龍大社に来てたの?」


 その映画が『花魁道中〜転生者の遺した伝説〜』というものだということは、日本国内ではあまりにも有名だ。だから、あゆみが知っていてもおかしくない。元々は『太一』と書かれていたのだが、書き足して『太夫』とした。こうすることで肌身離さずに持っていることが不自然ではなくなった。


「そうなの。クランクインする前にマスターに貰ったのよ」

「じゃあ、幼稚園の頃から!」

「そうよ。だから私はまりえほどではないけど、マスターとは古い付き合いなのよ」


 あおいは鼻を鳴らした。


「でも、まりえは15年もマスターのそばにいるんだからね!」


 まりえがドヤ顔で言った。まりえはあおいがなまだしあだと聞いたときから、太一を取られるのではないかと警戒しているのだ。そんなあおいとまりえだが、似たところがあるとすれば、太一との思い出を気分良くはなすことだ。


「あゆみは、幼稚園が一緒だったんでしょう?」

「うん。小学校も4年生の途中までは一緒だったわ」


 あおいやまりえとは対照的に恥ずかしそうな顔つきをして、あゆみが続けた。


「告白しようと思ったこともあるんだけど、お邪魔が入っちゃったのよ……。」

「雄大! あゆみ、そうでしょ? 」


 まりえが、何かを思い出したように言った。


「はぁうぅーっ。私の黒歴史。忘れたいわ……。」

「じゃあ、水槽の前に行きな。嫌なことは忘れられるって、マスターが言ってたよ」

「何よまりえ。今のは惚気ばなしなの?」

「えへへ。そーだよ。まりえはね、悩むマスターにずっと癒しを与えてたんだから」


 そのあとも、巫女たちの恋バナ大会は続いた。

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