第42話 7人の巫女

「おはよう、マスター! 光ってー!」


 新たな御神託を授かり、決意を新たにする太一の出端を挫いたのはまりえだった。太一はまりえとは長い付き合いだが、これほど欲情的に発言するような性格だとは、思っていなかった。不思議な光を浴びることが、病み付きになってしまったようだ。だが、それは決してまりえだけではない。優姫は指をくわえてこちらを見ているし、しいかは斜に構えながらも話の成り行きを気にしている。アイリスに至っては粘液質な涎をダラダラと垂らしている。唯一まともそうなのがまことで、それでも太一からは片時も目を離さない。


「今日は忙しいから、あとにしよう」

「えーっ、何があるの?」

「あゆみとあおいが今日から住み込むことになっているんだ」


 その受け入れのためには準備が必要なのだと、太一はまりえに言って聞かせた。だが、聞き分けのないまりえは、わざと太一に抱きつき、柔らかい胸を押し付けた。アイリスほどではないが、普通の男子高校生にとっては、充分に刺激的だ。


「あぁーっ、きっ、気持ちイイー!」

「まりえも、気持ちイイー!」

「ま、うちも、気持ちイイー! っしょ」

「私も、気持ちイイー!」

「優姫だって、気持ちイイー!」

「いやぁん、しいかだって、気持ちイイー!」


 結局のところ、まりえの密着1つで、光を放ってしまう、太一だった。そして太一が光を放つのに、いち早く反応したのは、まことだった。いつのまにか自分だけ巫女装束をはだけさせてた。


「何なのよ、朝っぱらから。気持ちイイー! じゃないでしょう」

「そ、そうね。けど、私は、気持ちイイー! ってなっちゃうみたい……。」


 そこへ現れたのが、あおいとあゆみだった。2人とも不思議な光を浴びたようだ。それであゆみは不意に気持ちイイー! となり、身体をへなへなとくねらせている。だが、あおいはならなかった。それもそのはずで、あおいは帽子にサングラスに大きめのマスクを着けて、長袖に長ズボンという完全装備をしている。そうでもしないと、ここへ来るまでのうちに正体がバレて、また追われてしまうのだから仕方がない。あおいは、太一が放つ不思議な光を浴びたかったが今回はやむを得ない。そんなことより、ここにいる他の巫女たちが皆、気持ちイイー! となることに、親近感を覚えていた。


「み、みんなは、あの不思議な光を浴びると、気持ちイイー! ってなるの?」

「そーだよー! マスターの放つ光って、ものすごーく、エロいんだよ!」

「ま、服を着たまま浴びるのは、もったいないっしょ」


 不思議な光を浴びた興奮はしばらく続いた。そのあとになって、ようやく自己紹介をし合うことになった。太一は、興奮しなくても発光することより、興奮しても発光しないことを望むようになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る