本島雄大

第41話 御神託と御利益

「どうじゃ。儂が言うた通りなのじゃ」

「いっ、いや。どちらかと言うと、ラッキースケベだった気がしますが……。」

「そうではないのじゃ。太一が入室したときから運命は決まっていたのじゃ」

「そうですか。でも驚きました!」


 太一は、朝の日供祭で、夜の興奮を光龍様に伝えた。そして、巫女が4人も新たに加わったこと、発光時間や回数が今迄とは違うこともはなした。


「ボーナスポイントなのじゃ」

「ボーナスポイント?」

「儂の神託を上回る成果を出した、ご褒美なのじゃ」

「巫女が、7人になったことですか?」

「そうじゃ。5人で良いところを、7人集めたのじゃ」

「では、2人分がボーナスポイントということですか!」


 光龍様は、これまで謎が多かった発光体質について、太一にいくつかの説明をした。まず、発光レベルというのがあること。光龍様の神託に従って行動すれば、どんどん上がる。発光レベルが上がると、発光時間が伸び、発光回数が多くなること。そして、何度も発光していくうちに、光の効能の種類や発光する身体の部位を制御できるようになること。今の太一は、淡水魚を気持ちよくさせるのが精一杯だが、訓練次第では人間も気持ちよくさせることができるようになる。さらに、発光するに当たり、興奮状態を伴わなくても良くなること。これがどれだけ便利なのか、このときの太一には理解できなかった。


「ですが、どうしてアイリスやあゆみは、気持ちよくなるんでしょうか?」

「そんなことは簡単なのじゃ。2人とも、元は金魚なのじゃ」

「そ、そんなぁ!」


 太一は仰天する。太一がまだ赤ん坊のときに、光龍池の前で光ったことがあり、そのときに4匹の金魚が擬人化したのだと光龍様に説明されても、まだ信じられなかった。だが、事実、アイリスもあゆみも、不思議な光を浴びると、気持ちイイー! となる。


「じゃあ、俺は昨日までに3回、今日だけで4回光ったってことですか」

「そうなのじゃ。今後、光を放つことが増えるのは間違いないのじゃ」

「そうですか。で、あとの2人は、何処にいるんでしょう?」

「1人は消息不明じゃが、もう1人はあおいなのじゃ」

「あっ、あおいも!」


 光龍様の説明が本当なら、巫女になった7人は全て元金魚ということになる。


「奴らはさながら、夜の街灯に集まる蛾のようなものなのじゃ」

「ははは、蛾に例えるなんて。みんなかわいいのに!」


 そう。少なくとも太一からすればみんなかわいい。それは、太一の好みが擬人化する際に反映されるからに他ならない。


「発光レベルをさらにあげるのじゃ」

「はい。何だか、やる気が出てきました!」


 太一にとって、今迄は忌み嫌っていた発光体質が、今では希望の光に変わった。だから、太一は光龍様の神託を何でも聞こうと思った。


「では、今度は禰宜を集めるのじゃ」

「禰宜、ですか?」

「そうなのじゃ。神社が栄えるには、優秀なスタッフが必要なのじゃ」


 禰宜というのは、大きな神社にいる神職で、主に宮司の補佐を行う役職を指す。


「差し当たっては、1人で良いのじゃ」


 光龍様の念を感じて、太一の頭の中には、経った1人の人物が浮かんでいた。だがその人物を禰宜に誘うということはおろか、会いに行くだけでも太一にとって苦渋の選択だった。

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