第34話 ミアとキュア

 思い立ったら直ぐ行動、という考え方は、太一とアイリスに共通している。アイリスは直ぐにでも巫女装束が着たいと我儘を言う。装束はあるのだが、アイリスは肝心の着付けができない。そこで、侍女2人を呼び寄せることになった。そしてアイリスが2人に経緯を説明した。


「まずは鱒宮司、姫様をよろしくお願いいたします」

「アイリス様は一見我儘ですが、最近は本当に我儘です」

「ははは、こちらこそ、よろしくお願いします」


 太一はそう言いながら、この2人にも巫女にならないか聞いてみようと思い、その機会を伺っていた。


「はい。アイリス様は日本が大好きです」

「それはもう、立派なオタクです」


 その後も2人によるアイリスの取扱説明書の棒読みは続いた。太一はアイリスが基本的にはオタクグッズを充てがっておけば従順になるということを理解した。


「ははは。2人も日本は好きですか」

「はい。いつの間にか、好きになってしまいました」

「ノージャパンノーライフです」


 太一がずっと狙っていた機会が訪れた。


「ねぇ、お2人さん、巫女……。」

「何寝ぼけたことを言ってるんですか?」

「そんなの、やるわけないじゃないですか!」


 かなり分が悪い。だが、太一は怯んだ気持ちを隠して、雄々しく叫ぶ。


「俺、一昨日から宮司やってるんだけど、手伝ってく……。」

「さっきアイリス様にも同じこと言ってましたよね」

「アイリス様がお手伝いいたします。私達はアイリス様のお手伝いしかしません」


 こうして、太一ははじめて巫女の勧誘に失敗した。それも、かなり食い気味な否定だった。

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