アイリス
第31話 3人目の巫女
巫女となった2人には、太一に恋い焦がれている少女であるという共通点がある。その点では、3人目の巫女は少し違っている。金髪ロングストレートの爆乳娘、アイリスだ。アイリスの恋の対象は、今のところ人間ではなく、日本そのものだった。アイリスは、本物のお姫様、ジェスワッサー王国の暫定1位継嗣王女なのだが、この日はお忍びで光龍大社にやって来た。
「アイリス様、本当にこんなに狭いところでよろしいのですか?」
「もっと広いところにしましょうよ、アイリス様」
ミアとキュア、2人の侍女に意思の確認と変更を迫られたアイリスだが、変更する気は全くない。光龍大社の大鳥居を潜ったときから、絵に描いたような日本の古い建築物の虜になっているのだ。両目をハート型にしていて、口元からは涎まで垂らしている。
「ここ以外、考えられない!」
反対を押し切って、いかにも我儘そうにアイリスが言うと、次女も諦めの表情に変わる。アイリスが、こうと決めたら最後、その意思を曲げないことは、既に骨身にしみている。こうなったら仕方がないのだが、侍女達にはもう1つやらなければならないことがある。顔を見合わせて、ため息混じりに棒読みする。
「……。では、私が交渉に出向きます」
「……。いや、ここはこのキュアめにお命じ下さい」
そんな侍女に対して、アイリスは1人ノリノリで言う。
「じゃ、じゃあ、私が自ら参るわ!」
数秒の静寂ののち、ミアが先に重い口を開ける。
「……。どうぞ、どうぞ……。」
「……。……。どうぞ……。」
侍女達はアイリスに、日本のお約束芸の数々を仕込まれている。アイリスは、日本が大好きなのだ。
だが、このときのアイリスには、巫女になるつもりは全くない。光龍大社にやって来たのは、買い取って別荘にし、来年の3月までを過ごすためだった。それは、アイリスが持つヘンテコな肩書きに由来する。
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