第30話 まない様

 太一は気分良く、翌朝の日供祭を迎えた。トントン拍子に2人もの巫女をゲットしたのが、嬉しいのだ。このペースだと、1週間足らずで5人の巫女が集まりそうだ。太一は光龍様の食事時間を昨日までの様子から見当をつけ、デザートに入った辺りで、ゆっくりと念じかけた。


「どうですか、パイナップルのお味は?」

「美味なのじゃ。じゃが、口の周りがヒリヒリするのじゃ」

「がっつくからですよ!」


 太一の予想通り、光龍様はもう間も無く食べ終わりそうだ。太一には光龍様にどうしても聞きたいことがあった。だから少しでも早く光龍様と仲良くなる必要がある。


「そういえば、光龍様と呼ばれるのが好きではないっておっしゃってました」

「そうなのじゃ。その呼び名は、後からついたものなのじゃ」

「では、何とお呼びすればよろしいのでしょうか」


 太一が考えた親しく念を交わし合うための手段は、至ってシンプルで、呼ばれたいように呼んで差し上げるというもの。明菜直伝の方法で、効果は小学生のときに実証済みだ。光龍様が乗ってくるかどうかは分からないが、1度は聞いておこうと思っていたのを、早速に聞いてみた。考えてから行動するまでの時間が短いのも、太一の特徴の1つだ。


「まなっちとか、まなちゃんとか、まーなーとかが良いのじゃ」

「まないうけおおなむちのひめ……。」

「ムッ、本名の呼び捨ては失礼なのじゃ!」


 太一が思わず念走ってしまったのが、光龍様の脳に届いてしまう。それでこっ酷く叱られる太一だった。はなしは結局、太一、まない様と呼びあうことで決着した。


「太一よ、今日にも残り3人全てをゲットするのじゃ!」

「今日だけで3人も? 随分とハイペースですね」

「速攻じゃ。よいな。速攻するのじゃ」

「はっ、はい。まない様!」


 こうして、朝の日供祭は終わった。

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