第14話 あゆみ
「美味しいのじゃ。お腹一杯なのじゃ」
御神饌にありつく光龍様だが、見た目の変化は何もない。太一は減りもしない御神饌を眺めながら、これからのことをあれこれ考えた。このまま毎回光龍様を脅すようなことはしたくはない。出来れば、もっと自然に念を交わし合えるような関係を築いていきたい。それに、念だけではなく、姿を見たいと思った。だが、それよりもまずは、今回の御神託である。巫女の募集はしているが、応募者はさっぱり来ていない。だから今日は面接の予定はなかった。ところが!
「おうおう、早速1人目の巫女が来たのじゃ」
「巫女が?」
美味しいものをたらふく食べたあとの大きいお腹を抱えて仰向けになっている光龍様を想像しながらも、太一はまだ半信半疑だった。すると、社務所のベルが鳴る。誰かが来たようだ。
「直ぐ行くのじゃ。戻ったら、片付けるのじゃ」
光龍様は、全てお見通しというような態度を漂わせて、太一を見送った。
社務所には、1人の少女が立っている。太一がお待たせしましたと声をかけると、その少女が言う。
「マッ、マスター! 久し振り」
「あっ、あゆみ! 戻ったの?」
「うん。さっき着いたところなんだ」
少女の名は水無月あゆみ。小4の頃の同級生で、親の都合でアメリカに引っ越した。それが今日、帰国したのだという。小4のときに海を渡ったあゆみは、ずっと太一のことを思って過ごしていた。あゆみが太一を意識するようになったのは、幼稚園の年長のときだった。世にいう集団嘔吐事件の日である。
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