第13話 神饌と引き換えに
夕方、太一はわざとゆっくり神殿に行く。すると、太一の思惑通りで、光龍様は日供祭をお待ちかねのようだった。
「早く支度をするのじゃ」
朝と同様に急かす光龍様に対して、太一は念を伝える。
「いいえ。今日はお食事がございません」
「何と! そのようなこと、ありえんのじゃ」
「仕方がありません。光龍大社は貧乏ですから」
太一は澄まし顔で念じる。本当は供える物はある。神饌を神が食べたといっても、本当になくなるわけではない。なくならずとも食べたことにはなるので、今朝並べたモノをもう1度並べれば良いだけなのだ。だが、太一はそれを隠していた。もし、隠し通せるものならば、神様とはいえ恐れることなく話し合えると思ったからだ。褒めれば喜ぶだろうし、脅しも効く。
「……仕方がないのじゃ」
光龍様は諦めたようだ。すなわち、太一の試みは成功。太一が念を送ろうと思わない限り、光龍様には届かない。思考の自由が保障された。これで、神の気紛れに振り回されることなく、ゆっくりとはなしをすることができそうだ。光龍様は、しばらく考えてはなしはじめる。
「御神託を授ける代わりに、支度をして欲しいのじゃ」
「御神託、ですか?」
「そうなのじゃ。御利益があるのじゃ」
御利益と言われては、太一も黙って見過ごせない。
「で、どんな御神託何ですか?」
「巫女を5人集めるのじゃ」
「巫女を、5人?」
「そうなのじゃ。その巫女が、光龍大社に恵みを運んでくるのじゃ」
光龍様は、キッパリとしている。太一が感じるはじめての神様っぽい言いぐさ、いや、念ぐさだった。太一は御神託を授かり、素早く支度をする。
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