第10話 喜びの次に訪れるもの

 運動会の最終種目、紅白対抗リレー。勝利したのは太一が率いる紅組。太一は思いっきり右手の拳を突き上げる。


「やったー!」


 このとき、太一の脳内で大量のエンドルフィンが分泌される。それは多幸感を生み、直ちに身体中に伝達される。そうなると発光体質の太一の場合、身体中から不思議な光を放つ。明菜が恐れていたことだ。大雨こそなかったが、小学校で集団嘔吐事件が再現される。


 直ちに集団嘔吐事件に太一の発光体質が関わっていることが明らかとなる。当然、太一自身も自覚をせずにはいられなかった。その場に明菜の姿がなかったからだ。


 それからというもの、太一にはなしかけるものはいなくなった。ピカゴローというあだ名が定着し、太一の陰でひそひそと話しながら太一のことを後ろ指をさす。女子児童はもちろん、A男もB男もC男も。本島だけはときどき太一とはなすのだが、そんな本島がいじめの対象となってしまい、いつしか不登校児になっていた。中学に入ると、親友を失った太一にもいじめの影が襲いかかる。投石されたり落書きされたりするようになった。それから先は、学校だけではなく家庭でも、母親を亡くしたり父親との関係をギクシャクさせたりと、良いことは何もなかった。

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