第7話 まとめ役のマスター

 小5になっても太一の人気は衰えなかった。春の運動会。


「マスター! C男の奴がリレーの練習に来ないんだ!」

「そこは雄大が妥協しろよ。C男は最近塾に行きはじめて、大変なんだ!」

「そうか。じゃあC男と良くはなしをして、練習の日程を決めるよ」

「あぁ、頼んだぞ。雄大!」


 太一はリレー選手を辞退した。理由は明菜の手術日と重なったからだ。明菜は、わざわざ運動会の日を選んで手術に踏み切った。それは、もし太一が運動会で活躍すれば集団嘔吐事件が再現されかねないからだ。だが、発光体質が集団嘔吐事件に関係しているとは、太一も含め誰も知らない。聡明な明菜は、誰にも相談せずに、そう決めた。その思惑通り、太一は少しでも明菜のそばに居たいと願い出た。そして、リレーの選手を辞退したのだ。


 太一の辞退理由を聞いてクラスの誰も反対はしなかった。だが、代役を誰が務めるかで揉めた。そんな中、手を挙げたのがC男。太一とビクターの座を競い合った仲だったが、どちらかというと勉強好きで小1の頃から運動会で目立つことはなかった。そんなC男だが、堂々としていた。


「ビクターの座を争った仲。マスターの代役は俺にやらせてくれ」


 その言葉に反対するものはいなかった。太一は、C男が無理をしていることを理解していたが、ここは明菜のため、C男の言葉に甘えることにした。


「太一、お前まで朝から出てくることはないのに」

「雄大もC男も頑張ってるんだから、応援させてくれよ」


 本島はC男とよく話し合い、練習は朝と決めた。それを聞いた太一が応援に来たのだ。はじめは本島とは肌が合わなかったC男だが、太一が間に入ると、2人は次第に打ち解けていった。そして、最高のチームになっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る