第6話 一途なマスター
そして迎えた年の瀬。太一の人気を白日のものにすることが起きた。水無月あゆみというクラスメイトが、太一にプレゼントを持ってきたのだ。
「マッ、マスター。あの、これ……。」
「おっ、おい。マスターの実家、神社だぞ!」
「よせよ雄大。光龍様は寛大なんだ。あゆみ、プレゼントありがとう!」
「受け取って、もらえるの? うれしい!」
あゆみは太一にプレゼントを渡すなり、走り出す。プレゼントを受け取ってもらえたことも、名を呼ばれたことも嬉しいのだ。数歩進んだところで振り返り、太一に向けて大きく手を振る。そのあとは本島の方に向かい、声は出さないがアッカンベエのポーズをする。
本島が言う通り、太一の実家は光龍大社という神社で、立身出世、学業成就、商売繁盛、芸道上達、美容健康、金運魚運大漁運の祈願に、大変ご利益がある。 と、言われることもある、穴場中の穴場の、隠れたパワースポットなのだ。
多くの女友達は4月のイースターや10月のハロウィンなどの洋モノのイベントについては遠慮がちだった。それが、この年の暮れにあゆみによって破られた。本人が意図せずとも、それは立派なクリスマスプレゼントだった。だから、翌年の2月、太一は大変な思いをする。当のあゆみは、親の都合で海外に転居してしまったあとだったが。
既製のチョコレートを3つ持った本島が、太一に話しかける。
「それにしても、太一はえげつないな! 60人超えだもの。全部手作りだろ!」
「ははは。俺もまさかBI子やBJ子からももらえるとは思わなかったよ」
「選り取り見取りってやつ! 誰が本命なんだ?」
「俺の本命は、なまだしあ1人だよ!」
「昔っから変わらないよなぁ……。」
太一は、今でもなまだしあのことが好きだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます