第11話 言葉より行動で
「今日はハルミを僕が、ナツミはマーリアンナが。今後も交代で指導を行う。お互い精々相手に差を付けられないよう励むんだな。勇者は本来一人で良いのだ。愚図を二人指導するよりも、少しは見込みのある方を重点的に鍛えた方が有意義だからな」
緊張感のない勇者共。
よくもこんなアホ面晒していられるものだ。
「では、ナツミは私と広場へ。今日は体術の基礎と、剣術の稽古をするぞ」
「はい。よろしくお願いします!」
マーリアンナに続いてナツミも部屋を跡にする。
あちらの方がまだマシだな。
残ったハルミを見て思う。
彼は頭が悪そうだ。基礎からしっかり叩き込むのが良いだろう。
「君には、魔術の基礎を、今日一日かけて頭と体に叩き込んでやる。同じ事は二度は言わないから、そのつもりで。歴史や地理に関しては、後で君達の部屋に本を届けさせるから、特訓の前後、休憩中などに読むように」
「すいません。俺、何故か言葉は通じてるけど、この国の言語は読み書き出来ないんだよね」
……愚図め。
「ならばメイドに頼んで読み聞かせをしてもらえ。今は専属メイドがいるだろう」
考えれば方法はあるだろう。
何故考えもせず答えを他人に求めるのか。
「君はもう少し問題解決能力を上げるべきだな。旅にでたら、一瞬の判断の誤りから命を落とす事もある。死ぬ前に、死なぬ為の努力をしろ」
「いやー、面目無い」
反省する様子はなく、笑みを浮かべている。
今この場で死地を彷徨わせてやりたい。
「君には言葉よりも行動で示した方が良さそうだ」
「あー、俺その方が有難いです」
「君は……まぁいい、今は実践あるのみだ」
言葉の裏にある真意を見抜く事も重要だ。
相手が何を考えどう動くのか。
其れを見定められなければ、危険を回避する事は容易でなくなる。
旅路で出会うのは善人ばかりとは限らない。
彼はまるで箱入りの生娘のようだ。
今まで一切の危険から、大切に守られて生きて来たのだろう。
だが、勇者である以上、そんな生き方は通用しない。
皆を救い導くのが勇者だ。
戦わずして勇者とは言えない。
生娘を勇者に……尋常ではない労力が必要だな。
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