第7話 メイド、ロリーナ入ります
リーチアったら、すっかり燃え上がってるわね。
足早に去って行く後ろ姿は熱意に燃えている。
私も、こんなに楽しい気分はとても久しぶりだわ。
日々黙々と仕事をこなして来た。
それ自体は悪い事ではないし、誇りを持って仕事をしているつもり。
でも、いつの頃からか唯の作業でしかなくなっていた。朝から晩まで、毎日毎日。
不満はない。お給金も良いし、皆とても良くしてくださる。
けれど、裏を返せば、満足する事もない。
手を抜いた事は一度も無い。
でも、確実に昔とは違う。
心は、昔のままではいられない。
日々成長する心に対して、変化のない現状。
それも昨日まで。
今は違う。今目の前にいるのは伝説の、本の中の文字や絵でしか見た事のない、異世界の勇者がいる、触れられる程近くに。
歓喜せずにはいられない。
勇者様の周りはいつもより鮮やかに映る。
見慣れた城内も、一段と煌めいて見える。
そんな尊き御方を、他の誰でもなく、私がお世話をする。
リーチアには、悪い事をしたかも知れない。
でも、私も気持ちが抑えきれなかった!
つい、勇者様を独り占めする様な事をしてしまった。でもきっと、リーチアもわかってくれるはず。あの子にはハルミ様がいるもの。
私は全力で、ナツミ様に尽くすのみ!
「…………勇者様、本当に脱衣をお手伝いさせて頂けないのでしょうか」
尽くすと誓ったばかりなのに……
浴場へ着いたので、私が脱衣をお手伝いしようとしたところ、ナツミ様は何故か怒ってしまわれて……。
追いやられてしまったので、今は壁越しに声を掛ける事しか叶いません。
「いや、結構です‼︎‼︎」
かなり強めの拒絶に、些か心が折れ掛けるも、こんな大役、他のメイドに譲る事は出来ないわ。
「ならば、どうすれば近くに置いてくださるのでしょうか」
遠ざけられてしまっていては何も出来ない。せめてお側に居たい。何かの役に立ちい。
「服くらい自分で脱げますから!あなたも入るならどうぞご勝手に!」
なるほど、ナツミ様は服は自分で脱ぎたい派という事ですね。記憶しました。
入る許可を得たので、早速入浴のお手伝いをしなければ。
「メイド、ロリーナ入ります」
念の為、声を掛けてから入る。
目を見開き此方を凝視するナツミ様
きっと、私の熱意が伝わったんだわ。
腕を捲り、スカートの裾を結び上げる。
「お背中、流させて頂きます」
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