私が恋に落ちた瞬間。

@physicalbeauty

出題編

つまらないと思う授業を受けている時(具体的に答えると物理の授業の時がほとんどなのだが…)、僕は物思いにふける癖がある。勿論この物理の授業もそんな気分だった。




最近、隣の席の女性を少し気になっている。人が異性を気になる理由はきっと人それぞれ違うのだろう。顔だったり、ファッションだったり、はたまた性癖なのかもしれない。まぁ、理由などわからないけどいつしか気になっていたという人も多いだろう。僕の場合は曖昧になってしまうが雰囲気に引かれたというのが一番正しいと思う。何だか失礼な言い方になってしまうが彼女は世間的に見てそんなに美人ではないと思うし、スポーツが得意など秀でているところも特に無かったと思う。ではなぜそんな彼女のどこに惹かれたと問われると彼女の存在自体の儚さにあると思う。世界から彼女のみが断絶されているような感覚、今にも消えてしまいそうな灯火のような存在感。僕は、今までに二人の女性に惹かれたが、彼女からは特別感じられる。異常と言ってもいい。




突然、涼しげな風が僕の頬を撫でた。そういえば、窓の真横の席になったときは暑くなって嫌だなと落胆したことを思い出したが、慣れてしまえばどうということではなかった。むしろ、優しい春風を浴びたり、舞い散る桜の花びらが数枚机に乗ったりするのは風流というか僕の心を高鳴らせた。


「よって、空気抵抗を受けるため物は重いものほど速く落ちるわけです。」


集中が切れたせいか、しわがれた60過ぎの先生の低い声とチョークが削れるカッカと高い音が耳にはい入ってきた。


そのとき、ふと左を向いた。別段意味はない、何となくだろう。そして、と目があった。そして、何故か僕はとてつもない浮遊感に襲われた。彼女は笑顔だった。満面の笑み浮かべていた。心を締め付けるようなこの痛みが、僕と君が「コイ」に落ちたことを教えてくれた…。






僕はこの日を絶対忘れない。

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