第28話「水着と下着」編 ②
「ぐすっ、まこととお買い物に行くって約束したのに」
「寝てるあいだにした約束なんて守れるわけないだろ」
琴乃が様々な手を尽くして、まことをなんとか泣き止ませてくれたものの、当の本人は間違いを犯したことには気づいていないようだ。
「とにかく俺は、今日は家から一歩も外にでないからな!」
「ええ! わたしとの約束は?」
「お前の約束の取り付けかたも、騙し討ちみたいなもんだしダメだ」
「えーそんなぁ。あ! じゃあさ、お買い物に付き合ってくれたら、水着姿のわたしの画像をあげるよ」
「いらねぇよ、そんなもん!」
つい拒否してしまったが、琴乃の水着姿の画像だと!
頭の中にいろんなタイプの水着を来ている琴乃が浮かび上がる。
可愛らしいワンピースタイプ、胸の大きさが際立つビキニ、小柄な琴乃には似合いすぎなスク水。
て、なにを想像してるんだ、俺は! だいたいもうすでにいらないって言ってしまったというのに!
それに小さい頃から数えきれないほど見てきてるわけで、いまさら琴乃の水着姿に特別な感情を抱くわけが――あれ? なんか俺の心臓がバクバクしてる気が……
いやそんなわけがない! 落ち着け、幼なじみの水着姿だぞ!
プールや海にも両手で足りないほどの回数を行ったし、なんなら去年も琴乃にせがまれて渋々だけどプールに行ったじゃないか!
それでもまだ琴乃の水着姿を見たいと言うのか? いったい俺はなにを期待しているんだ?
まぁたしかに去年よりもさらに胸が大きくなったみたいだし少しは見たいような――
「――ゃん、おーい! 起きてるー?」
琴乃が俺の目の前で手のひらを上下に動かしていた。
やべ! 意識とんでた。
「あ、あたりまえだろ。寝てるわけないだろ!」
「そうだよね、京ちゃんは目を開けて寝る習慣はないしね」
「知ってるなら聞いてくんなよ」
「じゃあ、どうしたの? ぼーっとしちゃって」
「い、いや別にたいしたことじゃないし」
「ほんとにー? てっきりわたしのスクール水着姿を想像してるのかなって思ったんだけどな」
「す、するわけないだろ! て、なんでスクール水着限定なんだよ!」
「えーお兄ちゃん、琴乃さんのエッチな姿を想像してたの?」
「勘弁してくれよ、まこと。さすがにエッチな姿は想像してないから」
「ふーん、じゃあやっぱりスクール水着を着たわたしの想像はしてたんだ?」
なんてことだ……まさかまことと息をあわせて誘導尋問をしてくるとは……
たぶん偶然だとは思うけど。
「ねーどうなの? いいんだよ、わたしの水着姿なら想像しても。ほらはっきり言っ
ちゃいなよ! ほんとは想像していてぼーっとしてたんでしょ? あぁ、そういえば京ちゃんの大切な画像ファイルにもスクール水着姿のロリ――」
「わあー! それ以上は言うなー! あーもう! そうだよ! 想像したよ! 琴乃の水着姿を! 悪いかよ! でも……すこしだけだし……すこしだけしかしてないからな!」
琴乃がにやにやした顔で見てくるから、俺はなんだか恥ずかしくなって顔をそむけた。
くそ! 頭に血がのぼってつい言っちゃったわ!
つーか、なんでこんな恥ずかしい告白をさせられなきゃなんないんだよ!
ほんと考えてることがわかんねぇ。
「もう琴乃さんだけずるいよー。だったらまこともお兄ちゃんに想像してもらうもん!」
「いや、しないから」
なぜか琴乃に対抗心を燃やしてるまことを軽くいなしたつもりだったが、この小学生はまったく聞く耳をもってないようで。
「まことはねー、えーとねー、琴乃さんが水着だったから――あ! お兄ちゃん、まことの下着姿を想像して!」
「しないしないしない!ぜったいに想像しないから!」
「わーん、お兄ちゃんに全力で拒否されたぁ」
「いやいやいや、このご時世で小学生の下着姿なんて想像したら、世間様にどんな目で見られることか」
とは言ったものの、数日前にまことの下着姿を見たわけだけど……
でもあれはまことが勝手に服を脱いだのだから俺は悪くない!……はず。通報されないよ……ね?
「むぅ、だったらねー、想像してくれないなら、お兄ちゃんのスマホにまことの下着姿の画像を送っ――」
「もっとダメー!」
さすがに下着姿の小学生の画像を所持するのはまずいだろ。
たとえ従妹だとしても、そんな危険物を持ってたら児ポ法に抵触するわ!
いや、下着だからセーフか?
て、例えセーフでも、それを誰かに見られた時点で、完全に俺の人生がアウトになるからな!
小学生マジやべぇ!
いろんな意味で小学生はこわいと思い知らされる俺だった。
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