第16話 「エッチな画像」編 ⑥
それから数日が過ぎた。
琴乃が俺のエロ画像ファイルを発見したあの日から、一度も俺の大切な天使たちを見ていなかったが、久しぶりに愛でようとファイルの隠し場所をおとずれる。
俺の
一番ではないかもしれないが、俺の好みの女の子であることには変わらない。
さあ、天使たちよ! その華麗なる姿を俺に見せてくれ!
俺は逸る気持ちを抑えて、ダブルクリックをする。
そしてモニターに映し出されたのは――――
「え? なんだ、これ……?」
目の前にあらわれたのは、おびただしい数の琴乃の画像だった……
俺んちの玄関の前で、手に入れたばかりの高校の制服をみせびらかす琴乃、部屋着のスウェット姿でソファーでくつろぐ琴乃、制服の上からエプロンを着てキッチンで料理する琴乃……
なぜ日常で目にしているものを、あらためてパソコンのモニターで見なければいけないんだという疑問が頭をかすめる。
ほとんどが自撮りだったが、何枚かは俺が撮ったものだし。
なんならその画像と同じものが、このパソコンに保存されているわけで。
わけのわからない思いで、画面をスクロールして一番下までたどりつく。
そしてそこには、丸っこいフォントで、
『我慢しなくていいんだよ』
と、書かれていた……
一体俺は、これを見てなにを我慢するというのだろうか……
というか、俺の大切なファイルはどうなってしまったんだ?
なぜ俺の天使たちが琴乃になってしまったんだ……
呆然とした俺は、きっとなにかの間違いで『ロリ巨乳』ファイルではなく、琴乃が勝手に俺のパソコンにいれたファイルを開いたんだと結論づけた。
とにかく落ち着いて、もう一度ファイルを確認してから開くことにしよう。
いや、でもこの場所に隠したファイルは、間違いなく『ロリ巨乳』ファイルだけのはずだ。
その証拠にファイル名もちゃんと『ロソ巨乳』になってるし。
……え? 『ロソ巨乳』……?
違う! これは『ロリ巨乳』ファイルじゃない! じゃ、じゃあ俺の『ロリ巨乳』ファイルはどこに?
慌てて『ロリ巨乳』と入力して検索をかける。
……な、ない……俺のパソコンから完全に削除されている……
ということは、こんなことをしたのは――――
「おい! 琴乃!」
「どうしたの京ちゃん、そんな怖い顔して? 晩ご飯はあと少しでできるから、待っててね」
キッチンで夕食の準備をしていた琴乃は、制服の上にかけたエプロンで手を拭きながら答える。
「空腹で苛立っているわけじゃねえよ! お前、俺の大事なファイルを削除しただろ!」
「うん、そうだよ。よくわかったね」
悪びれることなくにっこりとほほ笑む琴乃。
勢い込んでキッチンにのりこんだ俺は肩透かしをくらう。
「ちっ、あっさりと認めやがって。ていうかあの画像はどういうつもりだよ!」
「あの画像? あー、わたしの? 京ちゃんが一番好きだって言えない女の子の画像よりかは、いいかなーって思って」
「思ってじゃねえよ……」
あの画像を集めるのにかなりの時間を費やしたというのに……
「あ、それよりさ、京ちゃん」
琴乃は俺にすっと近づいてきて、背伸びをして耳元に口をつける。
耳に琴乃の息がかかり顔がほっててくるのがわかる。
「な、なんだよ」
「あの画像で我慢できたなら、次はもう少し過激な画像を用意してあげるね」
そう耳元で囁くと、琴乃は俺からさっと離れる。
「晩ご飯もうすぐだから、先にお風呂にはいったら」と、言い残して料理の支度に戻っていった。
「ちょ、待て……え? か、過激……な画像って?」
立ち去る背中を呆然と見送りながら、琴乃に囁かれた言葉を唱える俺。
過激な画像……てことは……は、裸とか……
手で胸を隠しながら自撮りをする琴乃の姿が、俺の頭に浮かび上がる。
思わず生唾を飲み込んだ。
て、琴乃でなに想像してんだよ!
つーか裸はないだろ、さすがに。
心臓がなぜかバクバクと勢いよく活動している。
そ、それに、もう少しって言葉をつけていたからな。
さっき見た琴乃の画像は、制服、スウェット、あとエプロン姿とかだ。
それよりも、もう少し過激な衣装ってことなんじゃないのか。
そうすると、水着? いや毎年見てるけど、過激という感じはしないし。
バニーガール? たしかに胸が強調されるし、衣装もかなり過激だ! しかし小柄な琴乃だと、なんか小学生が着ているみたいでほほえましい目で見てしまいそうだ。
他には――――ま、まさか! 法被にふんどしか!
て、過激すぎんだろ! なにを考えてんだ、俺は。高校生でこれで興奮したら将来有望だよ! 変態としての……
そもそもあいつがエッチな自撮り画像を所持しているとは思えないし。
ていうか、もうこれ以上琴乃で変な妄想するのをやめろ、俺!
頭をぶんぶんと振って邪念を吹き飛ばす。
兄妹同然で育った琴乃のそんな姿を想像するということは、実の妹に欲情する変態兄貴となんら変わらないだろ!
あいつは俺の大切な――――「よし!」と、頬を両手で強く叩いて自分に喝をいれる。
もう考えるのはやめだ。
晩ご飯の前に湯船につかって心を落ち着かせるんだ。
そして身も心もさっぱりしよう。
そう自分に言い聞かす俺だった。
それにしてもパソコンに疎いと思ってたけど、いつの間に俺の隠しファイルを発見したり、自分の画像を取り込んだりできるようになったんだ?
結局、ファイルを削除した理由もよくわかんなかったし。
『京ちゃんが一番好きだって言えない女の子の画像よりかは、いいかなーって思って』
琴乃がさっき言っていたことが頭をよぎった。
でも、なぜその理由で琴乃の画像に代わっていたのかは、俺にはまったく理解できなかった。
あー、ほんと琴乃の考えてることが、最近ぜんぜんわかんねえ!
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