第15話 「エッチな画像」編 ⑤
事実このファイルは琴乃が言ったとうり、黒髪ロングなロリで巨乳の女の子の画像ばかりだ。
でも別に琴乃にそっくりな女の子の画像を集めていたわけではない。
可愛いなと思う女の子の画像をなんとなく集めていたら、たまたまそれが全員琴乃に外見がそっくりだったというだけだ。
その証拠に、このファイルの女の子たちはみんな琴乃よりも可愛い!
って、俺がいくらそう言おうとも、これだけの数の琴乃と似ている女の子の画像を所持していたら信じてもらえなさそうだし。
それ以前に、琴乃がいま俺のことを軽蔑してるのか? 怒ってるのか? それとも気持ち悪がってるのか? すらまったくわからない。
くそ! どうすりゃいいんだ。とにかくなにか言い訳をしなければ!
「ち、違うんだ、こ、これは――――」
「京ちゃんは、こういう外見の女子がタイプなの?」
モニターに映し出されている画像の一つを指でさす琴乃だったが、その指先が微かにに震えているように感じた。
「ま、まあ、そういうことになるかな。と言っても、べ、別に琴乃がタイプとかそういうんじゃないからな」
「わかってるよー。たまたまわたしに似ている女の子の画像があつまっただけだもんね」
琴乃はそう俺に告げると、なんだか嬉しそうに微笑んだ。
そんな琴乃の姿を見て、俺は安堵する。
なんだ、いつもの琴乃と変わらないじゃないか。
怒ってもなさそうだし、軽蔑している感じもないし、どうやら俺の心配しすぎのようだったな。
「それにしても、さすが琴乃は幼なじみだな。俺が言いたかったことを代弁してくれて。ほんと偶然なんだよ。自分でも驚いてるんだ。琴乃にそっくりな女の子ばっかりでさ」
「そうだと思ったんだよね。京ちゃんの考えてることは全部お見通しだよ。それより、京ちゃんはこの中で一番気にいっている女の子は誰なの?」
「一番か? 考えたことなかったな」
「じゃあ、いま考えようよ。この子は?」
琴乃が一人の女の子を指し示す。
「うーん、一番ってほどではないかな」
胸の大きさが俺の好みよりもわずかに小さい感じがした。
琴乃くらいの大きさがあったらよかったんだけどな。
「ふーん、この子は?」
「どうだろうな。違うかな」
もう少し背が低いほうがいいな。琴乃よりも身長が高そうだし。
「こっちの子は、どう?」
「その子も、そんなにかな」
髪の色が明るすぎる。女子はやっぱり琴乃の黒髪みたいに落ち着いた色合いがいい。
「そうなんだ。あ、この子かわいいんじゃない?」
「そうかな―――――」
数分後。
「結局、一番の子はいなかったね」
「……うん」
あれ、おかしいな。間違いなくタイプの女の子ばかりをあつめたはずなのに、どの子も一番可愛いとは思えないなんて。
「じゃあさ、もうこのファイルっていらないんじゃないかな?」
琴乃がファイルをドロップしてゴミ箱み移動しようとしていた。
「ちょ、ちょい待て! なにも消去しなくてもいいだろ!」
「えー、でも、一番じゃない女の子だったら、残しておくことはないんじゃないかな?」
「いや、なんでもナンバーワンがいいわけではないんだぞ! この子たちは、もっともっと特別なオンリーワンなんだ!」
「京ちゃん、なに言ってるのかよくわかんないよ」
琴乃は無情にもゴミ箱の上にファイルを重ね合わせると、マウスの左ボタンから指を離した。
「……ああ……俺の世界に一つだけの
「あーすっきりした! それじゃ、京ちゃん、帰るね! おやすみー」
大事な仕事をなしとげたかのような清々しい表情で、琴乃は俺にひらひらと手を振り部屋から出ていく。
「おい! 勝手に人の大事なファイルを消しておいて! なにがすっきりしただよ!」
俺の声に耳を貸すことなく、軽快に階段を下りる琴乃の足音がだんだんと遠ざかっていった。
「たく、あいつ勝手なことばかりしやがって……なんてな」
玄関のドアが閉まる音を確認すると、俺はゴミ箱ファイルからいましがた琴乃によって捨てられたファイルを元の場所に戻した。
琴乃がパソコンの知識に疎くて助かったわ。
あいつはゴミ箱フォルダにファイルをいれれば消去されると思っているからな。
よし、あとはこのファイルを誰にもわからないように隠すだけだ!
俺は悪い笑みを浮かべて、作業に取り掛かるのだった。
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