第13話 「エッチな画像」編 ③
「ねえ、それよりもこの『ロリ巨乳』っファイルはなんなの?」
忘れてたー!
落ち込んでいる場合じゃなかったんだ!
どうしようどうしようどうしよう。
琴乃の右手にはマウスが握られていて、その指はいまにでもクリックをしそうだ。
こうなればもう削除するしかない!
インターネットを駆使してさまざまなサイトから苦労して集めてきた画像だから、ほんとはこんな方法をとりたくはない。
だが、琴乃に見られることに比べたらはるかにマシだ。
「琴乃!」
「ひゃう! なに? 京ちゃん」
俺は座っている琴乃に背後からがばっと覆いかぶさると、マウスを握っている彼女の右手の上に自分の手を重ね合わせる。
そのまま琴乃の右手の上からマウスを操作する。
突然の俺の行動に驚いたのか、琴乃は俺のなすがままになっていた。
よし! いける! このままドラッグしてゴミ箱の中に!
あと少しでうまくやれそうだと思うと、自然と気持ちが高揚してきた。
手のひらが汗ばみ、呼吸も荒くなる。
そしてファイルをゴミ箱にいれようとしたその時、マウスが急に動かなくなった。
どうやら琴乃が右手に力をこめて、操作を拒否しているようだった。
「ダ、ダメだよ、京ちゃん……」
「抵抗するなよ、琴乃! はぁはぁ、俺は早くやりたいんだ!」
なんてことだ。マウスの右ボタンにかけた指を、あと少し力を加えてクリックすれば終わるというのに。
「で、でも……」
「おとなしくしてたら、はぁはぁ、すぐに終わるからさ。いまは、はぁはぁ、じっとしていてくれ!」
作業が成功するかどうかの瀬戸際で気持ちはどんどん昂ってくる。
それに緊張感も加わり、俺はますます息が荒くなる。
「…………」
俺の説得が通じたようで琴乃がおとなしくなった。
このチャンスを逃す手はない!
右クリックをしようとしたその時だった。
琴乃は握っていたマウスから手を離し、その手で俺の頬を触ってきた。
へ? なに、いきなり。
そして顔だけを俺にむける。
「……わたしのこと……どう思ってるのか聞かせてくれたら……京ちゃんの好きにしていいよ……」
やたらと熱っぽい目をしている琴乃。
なんか様子が変じゃないか、こいつ。
「言ってることがよくわかんないんだけど。いまのこの状況で、なんでそんなことを言わなきゃなんねえの?」
「いまだからだよ! 大事なことなんだから、ちゃんと言って!」
エロファイルを削除しているときに、琴乃のことをどう思っているのかと聞かれても、まったく意味がわからんのだが。
なんだかよくわからないが、すごい剣幕だし、答えなきゃ作業の続きをさせてもらえなさそうだからな。
やれやれだぜ。
「わかったよ。そのかわり俺がちゃんと言えば、マウス操作の邪魔はしないって誓えよ」
「マウス操作……?」
そう呟くとぽかんと口をあける琴乃。
頭の上にクエスチョンマークらしきものが見えた気がした。
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