第12話 「エッチな画像」編 ②
マウスをクリックする音だけが静かな部屋をみたしていた。
琴乃は「へぇ」とか「うわぁ」とか声をあげながらで画面を見つめ続けている。
なんか呼吸がしにくい。俺の部屋ってこんなに酸素が薄かったったけ?
幼なじみに俺が保存していたエロ画像を見られるという行為は、想像以上に耐えがたい空気だった。
まあ、俺にとってはだけど。
琴乃はさっきからと変わらず平然としているように見える。
ただいつもと違うことが一つある。
この状況でなにも質問をしてこないのだ。
ここ最近、隙あらば答えに困ることを聞いてくる、あの琴乃が。
別に質問をされたいわけではないが、黙って画面を見続けられているのも、なんだか落ち着かない。
ダメだ! もうこの空気に耐えられない!
なんでもいい、いまならなにを聞かれてもためらわずに答えるから、頼む俺になにか質問をしてくれ!
俺の願いが通じたのか、琴乃は振り返ると画面を指さして問いかけてきた。
「京ちゃん、この『ロリ巨乳』ってファイルはなに?」
「うわー! ちょっと待ってくれ! なんでも答えるとは言ったけど、それだけはー」
「なんでも答える? 京ちゃん、そんなこと言ったっけ?」
そういや口には出してなかったな。
て! 落ち着いて反省をしてる場合じゃない!
あのフォルダだけはどうしても琴乃には見られたくない!
「いや、なんでもない! そ、そんなことよりも、エロ画像を保管してるファイルの場所がよくわかったな」
なんでもいい! とにかく琴乃がいま指でさしているファイルから気をそらさせるんだ!
「保管してるのがわからないようにファイル名をつけたんだけどな。さては偶然か? 勘が鋭いな、琴乃は」
「うん、すぐにわかったよ。それより、この『ロリ巨」
「わーわーわー! す、すごいな、琴乃! さすが…… へ? ……すぐにわかった? って俺のエロ画像ファイルが……マジで?」
そんなことがあるわけがない。
頭をひねって、考えに考え抜いたファイル名だぞ!
それを、すぐにって!
「でも偶然といえば偶然だよ。最初に開いた電子書籍フォルダの中に、一つだけ気になる題名の本があったんだもん。まさかそのファイルだとは思わなかったけど」
「そうだったのか……親がぜったいに見そうにないタイトルにこだわり過ぎたせいで、逆に琴乃の興味をひいてしまったということか……」
「『ジョジョ立ち健康法』ってタイトルにそんな思惑があったんだね」
「……うん」
自分が真剣に考えたタイトルをあらためて人の口から聞くと、恥ずかしくて死にたくなることがわかった。
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