第23話 「おっぱいの大きさ」編 ②
「ねえ琴乃さんのおっぱいって、いつからそんなに大きくなったの?」
「たしか中学生になってからだよ。そうだよね、京ちゃん?」
「なんで俺にそんなことを聞くんだよ!」
「えー、だっておっぱいが大きくなりはじめてから、京ちゃんがたまにわたしの胸をちらちら見るようになったから」
「ぶはっ!」
制服から部屋着に着替えて、リビングでくつろぐ琴乃と俺、そしてまこと。
女子二人はソファに並んで腰をかけ紅茶を飲んでいる。
俺はといえば、来週捨てる予定のペラペラの座布団に座らされたあげく手酌でコーラだ。
なぜこんな格差社会の縮図のような状況になっているのかというと、それは琴乃に言われたからだった。
もちろん俺も反論した。
俺の家なのにこの待遇はおかしいだろって。
そしたら琴乃に、さっきの罰だよと笑顔で告げられた。
なんの罰なのか心当たりは皆無だったが、笑っているくせに口調がぞっとするほど冷たかったので俺は従うことにしたわけだ。
べ、別に琴乃が怖いとかそんなんじゃないからな! て、誰に言ってんだ。
話を戻そう。
そんなことがあって、三人で会話をしていると、琴乃が変なことを言うからコーラを口から盛大に吹き出したところだ。
「ちらちらなんか見てないし!」
「じゃあ、わたしのおっぱいをじっくり見てた?」
「違っ――」
「えー、琴乃さんいいなー。お兄ちゃんはまことのおっぱいにまったく興味をしめさないんだよ」
「おい、お前ら、俺を無視して盛り上がんな」
「なに? 京ちゃんもわたしとまことちゃんのガールズトークに参加したいの?」
「そんなわけないだろ! と、とにかく俺は琴乃の胸なんかちらちらもましてやじっくりも見ていないからな!」
ったく。変な言いがかりをつけやがって。幼なじみの胸なんか興味ないっつーの!
……いやそりゃ全くないわけではないけどさ。あんなに大きいわけなんだし。
「まことのおっぱいも琴乃さんくらい大きくなったらお兄ちゃんがチラ見してくるのかなー」
「さあどうなんだろうね。もしかすると京ちゃんは膨らみはじめが好きなのかもしれないからね」
「琴乃さん、それほんと? あ! そういえばこの間、押し倒されておっぱいを揉まれたとき、お兄ちゃんなんか嬉しそうな顔してたかも! ねーそうだよねお兄ちゃん」
「いい加減にしろー! 黙って聞いていれば好き放題言いやがって! だいたいあれは事故だし、揉んでないし、それに嬉しそうな顔など俺は断じてしていない!」
「そうかな? 京ちゃんすこし口がにやけてたよ?」
「なんて失礼なことを言うんだお前は! そんなわけないだろ! 言っておくがな、俺は小学生の胸に興奮するような変態ではないからな!」
「……え? まことのおっぱいにこーふんするのって変態さんだけなの……?」
大きな瞳をうるうるとさせるまこと。
しまった! まことを傷つけるつもりはまったくなかったのに!
「いや、そうじゃなくて、ほら、一般論っていうかさ」
「いっぱんろん?」
「なんていえばいいのかな――そう! 変態さんに興奮されても、逆にまことも困るだろ?」
「防犯ブザーならすー!」
危機管理能力高いな!
興奮しただけでお巡りさんを呼ばれるのかよ! 変態にちょっとだけ同情するわ。
「え、えらいな、まことは防犯意識が高くて」
「えへへー」
まことは頬に両手をあててまんざらでもない様子。
「お兄ちゃんは変態さんではないからまことの胸に興奮はしないけど、嫌いじゃないからな」
俺の発言で傷つけてしまったお詫びというわけではないけど、普段照れくさくて言えない気持ちを俺はまことに伝えた。
嫌いじゃないからな、という言葉で。お前のことを大切に想ってるよ、という意味を込めて。
ここ数日、俺を困らせるようなことばかり言ってきて、頭痛の種になっていたまことだけど、大切な従妹であることには変わりがないわけだから。
「お兄ちゃん!」
ぱぁーっと表情を輝かせるまこと。
じとーっという目でにらみつけてくる琴乃。
なに? この両極端なふたりの態度は?
「え、えーと、どうしたんだ? まこと」
とりあえず、琴乃は放置。なんか怖いから。
「じゃあお兄ちゃんはまことのおっぱいが好きなんだね」
「なんでそうなるんだよ!」
「だってまことのおっぱい、嫌いじゃないんでしょ! まことね、変態さんにこーふんされたら困るけど、お兄ちゃんがこーふんしても困らないもん!」
どうやらまことは嫌いじゃないと俺が言ったことを自分の胸のことだと受け止めたらしい。
はぁ。もはやため息しかでない。
琴乃がいる前で、従妹の胸がすきだなんてことを言うわけないだろうに……
そんなことを言ったもんなら、また変な質問をされるに決まってるからな。
あれ? 質問はしてこないけど、琴乃が俺をにらみつけてる理由って、もしかして……
「京ちゃんもういいよ。京ちゃんがまことちゃんのおっぱいも好きなのはよくわかったから」
「い、いや違うんだ! 俺が嫌いじゃないって言ったのは、て、え? も?」
なんで、琴乃の胸も好きだということになってんだよ!?
「京ちゃん、いいかげんはっきりさせてよ! わたしとまことちゃんのおっぱいだとどっちがいいのかを!」
「あー、それまことも気になるー!」
「じゃあ決まりだね!」
「おい、俺はそんな提案を受け入れるつもりはないぞ!」
「お兄ちゃん!」
「な、なんだよ」
体格のいいまことに勢いよく迫られてたじろぐ俺。
「京ちゃん!」
「だ、だから、そんなのやらない……」
小さな体からにじみ出る気迫でいつもより大きく見える琴乃。
さっきもオーラを出していたし、まさかこいつも気をコントロールできる種族なのか!
めったにいないタイプのはずだぞ! ドドリアさんがそう言ってたから間違いないはずだ。
そんなことよりも、なんなんだ、この二人の迫力は。
思わずひるみそうになるが、こんなよくわからないうえに激ムズの二択問題なんてぜったいにやりたくない!
だから最後まで俺は抗うんだ!
「俺はそんなのぜったいにやんね――」
「「どっちのおっぱいが好みなのか、はっきりして!!」」
「……はい」
琴乃とまことに体を左右から挟まれて凄まれてしまい、俺は情けない返事をしてしまうのだった。
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