第5話

まだ店内は良い、人の目もあればおばも無理は出来ないだろう。


問題は外に出た後である、真夜中の3時に人気が無くなった飲み屋街、おばと青年が部屋にいく、いかないの押し問答が始まれば

「あらあら大事になってるじゃないの、おばさん、若い男にだまされちゃったんじゃいの」の構図が生まれるわけである、いやいや、ちょっと待ちなさい、、被害者は明らかに僕の方なのだ。。


結局、店でおばトークを交わしたとしても、店外に出れば振り出しに戻る最悪のストーリーが用意されている。


いま、手を打つべき事は、未来を変える為の努力しかない。

幸いトイレ側からはおばの姿はみえない。


僕はおばに気づかれないように、身振りだけで店員を呼び続けた、この際、ボーイであろうがガールであろうが入口はどこでも良かった。


最初に気付いたのは、ドリンクを用意していた最初に僕らの席についた女性だった。

僕は静かにさりげなくこっちに来るように、口に人差し指を当てた


お姉「どうしましたか?」


だめだ、まだ声がでかい、これは密談でなければいけない。


俺「助けて下さい」


お姉「え?」


僕はおばとの、出会いから今に至るまでの一部始終を丁寧かつ詳細に説明した。


俺「だから、帰るとき、上手く引き離して欲しいんです、、じゃないとあのおばさん、僕を辱しめるまで帰ってくれません。。」


お姉「え、、でもどうやって?」


俺「会計になったら、お金払って、おばさんを残して消えますので、時間差でおばさんを帰して欲しいんです!」


お姉「えっ!絶対に無理でしょ」


俺「無理なのは重々承知です、僕も時間内に考えます、、どうかこの状況を店のみんなにも伝えて助けてくれませんか?」


なりふりなど構ってられない、青森でトラウマを残すことだけはあってはならない。

個の知恵より集の知恵、まずは世論の支持を受けた上で、同士を獲得しなければならなかったのだ。


これで、僕と店員との安保条約が締結されたわけでる。


条約は以下の通り

1'なるべく2人きりにさせないでほしい。

2'おばに女性を出させないために、当たり障りの会話の提供及び援護。

3'傷つけるような攻撃的な事は言わない。


主にこの三点だ。


無事に世論をつかんだ僕は、爽やかに席に戻った。


俺「すいませんでした~」


おば「芸能人に似てるって言われるでしょ?」


俺「いや、あまり言われないですよ?」


おば「ほら、あの人、、なんだっけ?もこきち!」


お姉「もこきちですか?」

と、ドリンクを運んできて席についた。


おば「あ、もこみち!あなたもこみちにそっくり!」

俺「いや、、あんまり言われたことないですね!」

おば「いや、似てる似てる!ねぇ、おねぇさん!」


多分、もこきちが好きなのであろう、おばは今日一番のテンションで嬉しそうにいった。


どうやら、飴を与える作戦に切り替えたらしい。


おねぇは、多分、全然似てないとわかっているので「あぁ、雰囲気は」と促し

おねぇ「かんぱーい!」


と、無理矢理会話を終了させネクストストーリーへ導こうとしてくれた!


俺「かんぱい、おかぁさん!」

と、僕もおばと乾杯する。


おば「え!?おかぁさん?おかぁさんかぁ、、おかぁさんは家のなかだけで、もううんざり、、」


不味かった、、どうやらおかぁさんはNGワードだったみたいだ、、


俺「、、ですよねぇ~」


おば「こういうとこでは、おねぇさんか名前で呼んで!ふみえって言うの。」


俺「ふみえさ、、おねぇさん」


おば「はーい!」


これはどんな展開なんだ?僕は不条理な展開に少し混乱していた。

一瞬の沈黙、そこへプロの援護射撃がすっと、自然なタイミングで入ってくる。


俺「実は、さっきそこであったばっかりなんですよ~最初ふみえおねぇさんが声を掛けてきて、道に迷ってるのかなと思ったら、スナックに一人で入る勇気がないから一緒に飲みにいかないか?って話になり、、」


僕はわざと一度説明済のこともあたかも初めて伝えたかのように振る舞った。


おねぇ「あ、そうなんですね!おねぇさん綺麗だから、スナックのママが若い男性を連れてきたんだと思ってましたよ。」


さすがプロトーク、これで気分を悪くする人はまずいないだろう。


おば「あら、そう言う風にみえてるのね!」


と、お店のおねぇさんは、上手くリードして世間話に抑えてくれている。


おねぇ「私も一杯頂いてもよろしいですか?」


しまった!援護射撃にも費用は掛かってしまうのだった、、この際、しょうがない。必要経費として気持ちよく飲んで貰おう。


俺「どうぞ」


と、同時にビールをもう一杯貰うことにした。

お店のおねぇさんが席を離れた一瞬の事だ


おば「眠くなってきちゃった、、泊まっていこうかな?」


俺「えっ?」


とっさに周りの音で聞こえないふりをした。


おば「この店は、普段からこんなに騒がしい店なの?」


俺「いや、お客さん若いしみんなこうやってストレスをぬいてるんでしょうね、しょうがないですよ!」


おねぇ「ごめんなさいね、騒がしくて~」と、ドリンクを運んでくる


終始、ペースは援軍が掴み続けた。援軍は大変優秀でおばには子供が三人、娘、そして息子が2人、しかも息子と僕が同い年であるという情報まで引き出していた。


彼女のポジションは諜報部員に決定なのはいうまでもない。


しかし・・・

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