第3話 不安
嫌な胸騒ぎを感じ、夕焼けを見るのをやめて、
ケータイを見ていると、
「じゃあ今回この辺りで帰るか、忠、帰るぞ」
そう言って父は車にエンジンをかけようとしたら、
「.....あれ?.......動かん」
全くかからない、キーを回しても、何も起こらなかった
「これは...修理かな」
車のボンネットを開けて、父がそんなことを言った
「え!じゃあ今日はおばあちゃんの家に泊まるの?」
「まあ、そういうことになるな」
ケータイの充電器をモバイルバッテリーしか持ってきていなかった。しかも、いつも読んでいる小説もたまたま忘れてしまったために、思わず、
「...最悪だ」
と愚痴を吐いてしまう、自分の不運さに天を仰ぎそうになる、
「とりあえず、ばあちゃん家に入るか」
そう父が言ったので、家に戻ろうとすると、
「.............た..........だ........し.......」
唐突に、しかしはっきりと自分の耳に[ただし]
と言う声が耳に入った、すぐさま後ろを向くが誰もいない、父が玄関から、
「忠ー、早く来ーい」
と言う声が聞こえる、父が自分を呼んだのをぼんやりと聞いていたのだろう、そうに違いない、と頭では無理やり考えるが、心は忙しなく動き始めた、
「い、今行く…」
精一杯の声を絞り出して父に言った、もう一度声がした方向を見る、やはりそこには田舎特有の何とも言えない静けさが残っていた…
父が祖母に相談してる間、自分は居間でボーッとしていた、ケータイの充電が満足にできないから、今のうちに節約をしているのだ
「どうしたの忠くん?帰るんじゃなかったの?」
「いや、それが…」
先ほどまでの事情を話した(自分に起きた事以外)
香織さんはそうなんだと興味のないような返事をした、興味ないのかよ
「そうだ!今日泊まるなら、近くの山の上から星でも見ようよ!」
「えぇ…別にいいですよ、こんなに暑いのに」
「でも、夜はそんなに暑くないし、山の上で見る星は最高に綺麗だよ〜」
結構気になるのが男の子の宿命なのかもしれない実際、自分は少し行ってみたいとは思う、しかし、ここに来てから少し悪寒を感じるような事が起こっているので、また何かが起こる予感を感じている
「分かりました、行きましょう」
香織さんは「よっし!」と自分にグッドポーズをしてくる、ちょっとイラっとするなぁ
「けど、香織さん」
香織さんはボケッとした顔をこちらに向けた
「行くにしてもルートが分からないんじゃあ山頂に行くことが出来ないんじゃないですか」
「そこは、叔父さんかお婆ちゃんに案内してもらうよ」
「はぁ」
それなら安心だ…いや、父だったらちょっと怖いな、
そんな話をしていると、祖母と父が居間に来た
「忠、今日はこの家の空き部屋で寝ることに決まったからそこに荷物を置いといてくれ」
父からそう言われたので、自分は自分の荷物と父の荷物を持って部屋に向かった
「父さんの荷物結構重いな…本当たくさん持ってくるな」
父はいつも荷物が多い、心配性だからなのだろう
「まぁ、そのおかげで助かることがあったからいいんだけど」
実際、様々な所に行く時、父の持ってきてるものには助けられる、
「今回は何を持ってきてるのかな」
そっと見ようとした時、
「忠ー、婆ちゃんが飯を作ってくれたぞー」
「わ、分かったー、今行くー」
ビックリした、心臓が飛び出すかと思った
「見るのは止めとこう」
そう言って、すぐさま居間に向かった
食事が終わると、香織さんが祖母に話しかけた
「お婆ちゃん、今日さ、近くの山の頂上への案内
できない?」
「近くの山…
「そう!そこだ!そこの案内できない?」
「……それって忠を連れて行くのかい?」
「?そうだけど…」
「そうか…」
祖母は深く考えた後に、
「連れて行ってもいいけど、私の言うことは守って欲しいと忠に伝えといてくれないかい」
「わかった!お婆ちゃんありがとう!」
香織さんは子供みたいに無邪気な笑顔をして、こちらの方を見てVサインをした
自分は父に行くかどうかを聞きに行った、部屋に向かうと父は、パソコンを使って作業をしていた
「父さん、今日の夜に近くの山の頂上から星を見に行くんだけど、行く?」
「いや、いいかな」
「そうなんだ、じゃあ香織さんに伝えとく」
そう言って、部屋を後にしようとすると
「忠、一応これ持ってけ」
そう言って、懐中電灯と変な物体をもらった
「…なにこれ?」
変な物体を持ち、聞いてみる
「アーミーナイフっていうやつだ」
アーミーナイフ?ああ、色々な道具が内蔵されてるやつか、それを使う時なんて来るのか?
「まあそんな顔すんな、使うかも知らないから持っとけ」
「そうかなぁ…」
まあ持っとこう、持っといて損はない
そうやっているうちに時間は過ぎて、香織さんと
祖母と一緒に向かう時間になった
「それじゃあ霊鋼山にしゅっぱーつ!」
「はいはい、いきますよ」
「元気だなぁ、香織さんは」
少しワクワクしながら向かおうとすると、
「…………た…だし……い……な」
また聞こえた、しかし今度は家の方から聞こえた
「どうしたのー忠くんー」
香織さんがそう言って自分を見ている、
「す、すいません…さっき誰かが僕を呼びませんでしたか」
「?、誰も読んでないよ?」
「まさかお姉さんを怖がらせようとしたのか〜」
「いや、そうじゃないですけど…」
祖母を見るが、キョトンとした顔をしている
今回は、間違えて聞いたということがない、とても怖いと思ったが不思議と心は落ち着いていた、怖いのに安心できる声のように思えた、なんでだろうか
「ほら行くよー!忠くーん!」
自分の思考は香織さんの大きな、ハツラツとした声に掻き消された
「…深くは考えないでおこう、怖くなるし」
そう思い、すぐに香織さん達がいる方に走って行った、自分の心の中にはモヤモヤとした感情が立ち込めていた
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