第2話 存在と代償

「はあ、寝よ」

終戦の日、本土に帰還して僕は疲れてすぐに寝た。


「お兄ちゃん」

聞こえる。

「お兄ちゃん」

あの日、確かに死んだはずの妹の声が聞こえる。

「お兄ちゃん!」

ああ、夢か。

「あれ?お兄ちゃん、何で泣いてるの?」

あれ?僕泣いてる?

おかしいな、別に痛く無いのに...

そうか、これは「悲しい」と言う感情か。

長らく忘れてた感情だ。

「なんだ、妹よ」

「お兄ちゃん、誕生日おめでとう!」

「.....ありがとう」

僕は、また泣いていた。

「誕生日プレゼントにほしいものを何でもあげるよ」

「は?何でも?」

妹は首を縦に振った。

どうせ夢なんだし言うだけ言ってみよう。

「今まで失ったもの全部がほしい」

僕は、感情のありったけを乗せて言葉にした

「いいよ、全部あげる。その代わり今のお兄ちゃんの全部は無くなるよ。」

その先の言葉は聞かなくても分かった。


「構わない。今の僕には何もないから」


「分かった、これだけは覚えていてね」

妹は大きく深呼吸をして僕に言った。

「今からお兄ちゃんは「篠崎泰澄(しのざきたいち)国立新帝都学園高等部の1年生。

そして私は篠崎真白(しのざきましろ)国立新帝都学園中等部の3年生だよ。」


...なんか情報量多いから整理しよう。


篠崎泰澄(しのざきたいち)←僕


篠崎真白(しのざきましろ)←妹


僕は国立新帝都学園高等部1年で

妹は同じ学園の中等部3年。

うん、理解した。

なんかすごい夢だな。


「あと、お兄ちゃんに友達はいない」



.........え、マ?

あれ?なんか意識が薄れて....



知らない天井だ。

ここどこ?ああ本土の基地か。

いや、基地の天井じゃないなこれ。

まじでここどこ?


あ、マイ息子おはよう。


コンコン

ドアを叩く音?

ガチャ!

開いちゃったよ、それも結構な勢いで。


「お兄ちゃん!朝だよ!」


「!?」

なぜ妹がここに?

ああ、昨日の夢を思い出してきた。

「!?」

ますますおかしいぞ。


「お兄ちゃん!起きて.....た?」


しまった!息子おおお!


「.....ハアハア...お、起きないとい、イタズラしちゃうよ」

なんか知らないうちに妹がイタズラっ子になってたんだが。


僕は勢い良く布団をめくった

ガバァ

「!!!!!!!!」

「おはよう、真白」


僕はなんとなく状況を理解した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る