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あれ、こんな時間にどうしたの?
ってか、なんで美代子の部屋に?
まあ、いいや。
来る時は連絡くれないと……、美代子もびっくりしたでしょ。
え? 美代子まだ帰って来てないの?
は? なんで?
じゃあ、美波は?
ああ、義母さんのところに……。
それならいいんだけどさ、最近、美代子の外出が増えてさ。
少し心配してたんだよね。
え?
いや、美代子に限ってそれはないと思ってるけどさ。
美波の世話が疎かになってないかって心配なのさ。
君もお父さんになったら分かる日が来るよ。
で、今日はどうしたの?
…………。
ああ、もしかして進路相談?
それなら今はよしてよ。
仕事でクタクタなんだよ。
…………。
そう気を悪くしないでよ。
オレだって君をあの大学に行かせてあげたかったけど、あれは時の運が味方してくれなかっただけさ。気を落とすことないし……、実際、卒業してからが一番大事だからね。
いや、ホントホント。
入社して十年経った今でもそう思う。
でも、君が受験生の時に教えたオレの勉強方法は無駄じゃないよ。
あれがないと今の自分はないからね。
そうそう、〝自律〟の方法ね。
さすがに、今、アレをやってるとヤバい奴に見えるかもしれないけど。
え?
だって、ヤバいでしょ。
本当に自分を律することが出来る人ってわざわざルールを作らないもん。
ルールがなくても自分の中にちゃんとした行動原理があるから、それに従ってれば、いまここでどれくらい勉強をすべきだってことが分かる。
そういうもん。
まあ、若い時のオレはそれに気づかなくてバカみたいな自縄自縛のルールをたくさん作ってたんだけどね。
そういえば、君にも何か言った気がするな。
たしか……、あ、そうそう。
××。
……我ながらヤバいこと考えたよね。
あれ、実践してないよね?
実践してたら、相当、心に闇抱えちゃってることになるけど。
…………。
え?
いや、その理屈は可笑しいでしょ。
オレはアドバイスしただけで、それを実践するかどうかは君次第なんだから。
そういう取捨選択が出来る歳でしょ。
てか、出来なきゃ駄目。
なんでもかんでも大人の言うこと聞いてちゃ駄目だよ。
何度も言うけど、〝自律〟はオレの中では失敗体験、若気の至り、黒歴史の一つなの。
君に教えた時にはまだオレも若かったってこと。
だからさ―――――。
って、え、あれ。
は?
ちょ、待って。
なんで?
これ刺さってんの?
はあ……?
おまえ……、マジで、はあ……?
ふざ、けん……な……。
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