第81話 

「4Q285İnsanın biliyi xaricində yaramaz uşaq 5300 Yağışda islanmayın 正式名称は こうかな。うん正解。米国のニューヨークタイムズや英国のデイリーテレグラフにも記事が載っている。当時は騒がれたのだろう。―nənəナナ。たいした能力ではないが、レガシー(遺物としての価値)であることに違いはない。オブジェとしても秀逸で、無数の水玉の黒いドットが広がる、巨大なカボチャみたいな形をしている」

 昼過ぎ、ブルーバードがスチームパンクから戻ってきた。今は皆の中心にいる。


「セレンさんが海中都市ゆきを承諾してくれたYO! 私も肩の荷が下りた」

 俺の肩の荷も下りた。母のことだけが心配だった。


「そうかい。あの頑固者が折れたかい。まぁ、あたいのように海中都市を追い出され彷徨うのも悪くはないが、じょうちゃんにはそれがいいだろう。人間は収まるところに収まるのが一番さね」猫がウィンクする。


「私の計算上でもそうなっている。セレンさんが夜店の店頭で、教授に駄々こねて、お買い上げされてから数千年。あの美貌と嘘泣きを愛でることができないのは寂しくあるが、良い選択だっただろう。クエストはもうなくなったのだから……」

 ブルーバードの瞳から、涙が一粒こぼれた。


「これだから――Warm ウォームRainレイン――を飛ぶのは嫌なんだ。水滴がまとわりついて錆びてしまいそうだ。―nənəナナ。いい話が聴けて良かった。これから先、なにをするべきかどこに飛ぶべきか悩んでいたから。目的のない人生なんてスイッチを切った扇風機と同じだ。けれど……降雹でビルごと無くなっているなんてオチではなかろうか?」

 ブルーバードは小首をかしげ、俺を見つめる。


「一度、リップス堂まで荷物の運搬ついでに、VRローションで当時のロブスターに登ってみた。ビルの内部には存在してなかった。そこに住む人間にあれこれ聞き込みして回ったが、みんな首を振った。所在はトップシークレット。そりゃそうだろう。大国の力の均衡で奇跡的に平和だったが、テロにも狙われて安全ってわけじゃない。しかも当時は隣国との絶賛、戦闘中だったのだから」

「ふむ。恐らく国の上層部しか知らない秘密の場所に……つまり地下深くかのぅ?」

 教授が眉間にしわを寄せ、俺が言わんとしてることを先回りする。


「恐らく当時の価値観ならそうしただろう。俺もそう推測する。そこまでしか……」

 手を上げて、教授が俺の言葉をさえぎった。


「無理じゃろ。紛争が続くアルメニアとアゼルバイジャン両国にとっての聖地であるナゴルノ・カラバフ地域をすっぽり抜かしたとしても残りのアゼルバイジャン全域が候補となる。どれ程の広さだと想定しておるのか? 石油パイプラインや掘削の為の技術は世界中から最高水準で供与されておる。パイプラインを使い有線ケーブルで、深く深く深く繋がれた状態であるならば、もはや探しようがあるまいのぅ」

 ナイスですね〜教授。


「あきらめたらそこで試合終了ですよっ!」ブルーバードが片翼を持ち上げた。


 計算通りだった。ブルーバードが戻ってくる前に―nənəナナの捜索については3人で了承ずみだった。けれど俺たちだけでは不可能なのだ。得意分野を尊重した合議制。総力戦が必要なのである。

 量子コンピュータの使徒である青い鳥は、好奇心を抑えることができない。


「VRで現地に赴いたとしても国家機密を探ったら首をちょん切られて終了だろう。だけど方法はある。嘗てマザーAIは現存世界を確立して人間を心地よく生きさせる補助要員として人造人間を大々的に量産した。問題です。ところでそれは、一体誰をモチーフとしてDNAをコピーしたのでしょう~か?」

 俺の言わんとしてることを、ブルーバードが先回りして教授に伝えてくれる。

 


「ほへ?」教授がきょとんとした顔をした。

 




 

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