第4話 裏アカウント①
僕は僕である。名前は未だ無い……と言うより記憶喪失の類いなのだろう。
僕は成人であるのでそれまでの記憶が無いことは非常に不自然である。
この広い屋敷の主は世間から勇者とあがめられている赤い鎧の剣士で、パーティーを組んで与えられたクエストをこなすことをエートスとしている。えーと、エートスってなんだっけ? まあいいや。
パーティーのその他のメンバーはカッパギのアルフェス、そしてまだ年若い色白のメガネを掛けた賢者と
圧倒的な戦闘能力を誇るリーダーの剣士は兜で顔を覆い素顔は見えず無口でいつも荒い息だけが聞こえる。≪コホゥー≫≪コホゥー≫おしゃべりなのはアルフェスで、戦闘時の作戦などは彼が実質の指揮を執る。そしてアイテムなどのお宝は、その異名どおりにカッパギする。つまり根こそぎぶんどるのだ。彼が裏リーダーだと言っても過言ではないだろう。
色白の賢者はいつもおどおどしていて頼りない。他の二人より年齢が若いので仕方がないのかもしれないがもうちょっとしっかりして欲しいものである。
さて僕がこのパーティーの中で一体どういった位置づけなのかは記憶が曖昧でよくわからない。だけれども誰からも邪険にはされていないようなので安心はしている。
彼らはつい先日、海中都市における驚異であったリバイアサン(水にすむ幻獣)を退治したばかりである。だけどすぐに賢者が持ち込んだ次のクエストに取りかかろうとしていた。
ピンクタワー。
馬車を使って2週間ほど旅をしなければたどり着けない僻地の桃色の塔。
賢者によればタケノコみたいな構造らしく、キリンの模様が数学的法則で作られるのと同じようにように、どうやらそれは生物由来のものであるらしい。
まあ冒険譚であるからさしずめ閉じ込められたドラゴンでも眠っているのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます