第7話 冷たい空気の街の宝貝店へ行ったこと、及びこの星の海について聞いたこと~ 第8話 妖しい光の海水鳥苑(シーバードホテル)後編
*未完部分です。この部分は、あえて未完のまま当時のメモを掲載しています()内はそのメモに対する補記になります*
「油侭老人の死骸、冷やして固める、卵から孵らないまま生きる鳥、眠り猫、冷たい空気の街、空気上の冷水、空気上の海水=この星の海、海水鳥苑の光(ネオン)、婦人の白い肌、蝶苑との対立、蝶の墓、クジラの墓、油侭老人の冷凍ミイラ、宝貝店、さ迷いヒヨコを追って次へ? クジラのトイレ? この星の中心? 吸い込まれて次の場所へ……」
と書かれたメモがあり、その付記として、「ラズベリーの森、ベージュベリー」という場所もあったとされる。
(冷たい空気の街というのは、海水鳥苑を出て付近に存在した街で、宝貝店というのはその街の商店街にあった店と記憶するが、蝶苑、蝶の墓というのは全くそれが何処にあったのか不明で、蝶苑との対立ということに関しては出来事としても全く不明である。また、付記にあるラズベリーの森、ベージュベリーというのも海水鳥苑の外のこの世界のどこかに存在したのであろうが、その位置や詳細は全く不明である。)
また、別のメモで、
「油侭→棺桶ごと小さくなっている。それを持って街の宝貝店で開けて宝石に変えてもらう。独楽出はそれを任せて何時広場に持って来いと言うがいつまで経っても来なかった。」
更に別のメモで、
「冷気の海に落ちたラリスティションの残骸がある?」という話を「男と貴婦人が(この話を)する」のを聞き、「ここへ何かを探しに行く?」とある。話の中でラリスティションは「随分昔に落ちたような話になっている。」
(男と貴婦人は、さきに自室へ戻る際に紛れ込んでしまった部屋のあの二人だが、その時に話の内容を聞いているのか、また別の時に何処かで聞いた話なのか不明瞭である。だがこれを元に、海底へ向かっていると思われる。また、最初のメモにある「空気上の冷水、空気上の海水=この星の海」という通り、海は海水ではなく冷たい空気であり、なので生身で海底へ降りることができたことになる。)
他に、
「街の酒場でヒヨコや眠り猫の話。その後ホテルへ帰って、海底へ。」
というメモあるがこれはどのタイミングでの話なのか不明であるが、ともあれこうして海底へと降りることになる。
*
(海底の探索で、クジラの墓場を探しているおじいさんと出会った際のおじいさんの台詞がメモに残されている。)
「私はクジラの墓場を四十年間探しておる。クジラの墓場を探すに大体四、五十年、おぬしの言ったな、確か、ラリステイションの残骸を探すには八十年から百年はかかると言われておるわ。下手すりゃ子どもを作って二世代に渡って捜索せねばならん」
(おじいさんと海底の探索を続ける中で、クジラの骨に行き着いた際のメモとその時のおじいさんの台詞。)
これがクジラの骨? 随分長い……何処まで続いているのだろう? 頭も尻尾も見えないではないか。これはクジラなのか? 海蛇?……いや、確かに哺乳類の骨格には違いない。幅もある。
「頭に向かって歩くぞ。頭に到達しないことにはな。クジラの骨を発見したといっても大したことにはならんのでな」
(クジラの骨を頭の方に向かって長い距離長い時間を歩く。おじいさんの歩みは遅くいつの間にか距離が離れ、先にその頭まで辿り着いた際のメモ)
どうもおかしかった。その頭は随分先細りになっており、しかも形は犬の頭の骨だった。僕は昔一度犬の骨を見たことがあるが、まさしくこれは、それでもいささか大きいが、形は犬の頭に違いがない。こんなものを求めて歩いてきたのか? それとも、これがやはりクジラの骨なのだろうか? 探検家の老人はいなかった。随分後ろの方に姿を認めた。あんなに彼は遅れていたのか。僕が先に着いてしまって悪くなかったろうか? 彼はこれを見てがっかりしないだろうか?
僕は頭の骨の先端まで歩いて、驚いて立ち止まり、二、三歩後ずさった。足を踏み外しそうになったのだ、つまり――一寸先は、崖のように切り立った穴になっていたのだ。
ずっしりと深くえぐれた広大な真っ暗闇の円の下方に、白く光る無数の骨、クジラ達の骨がゆらめいて、白緑に発光するように見えた。
「これはクジラの墓場じゃあないだろうか? おじいさんに知らせてあげなければ」
しかしふと僕は気づいた。
「いや待て。これは違う」
大小の骨が白い光のように、底知れぬ海底にちらついて見える。横には、犬の骨の牙が一本抜け落ちて、「海水鳥苑」と記してあった。
「これはシーバードホテル?」
僕は後ろへ駆け戻った。幾らか行くと、ボロ切れの様に朽ちた衣の中に、もうだいぶ侵食された骨の死骸を見つけた。
「おじいさん……!」
何処まで戻っても、シーバードホテルの灯りが遠くにチラチラ揺れて見えることはなかった。
「海水鳥苑の残骸を探すには、大体百二十年から百三十年、お前の骨を探すには……」
と、僕の足に絡まってくっ付いて来た老人の白骨がカタカタとその口蓋を鳴らしたのを振り払った。
(この後、メモの末尾にある「さ迷いヒヨコを追って次へ? クジラのトイレ? この星の中心? 吸い込まれて次の場所へ……」となり、場面は常夕遊園地へと移る。)
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