第20話あと一歩

「とうとうここまで来たか」


 俺は会議の日にみんなで決めたイベント系のミッションリストを眺める。


 そこに書かれたミッションには全てクリアの文字が書かれていた。


 その文字を見て思わず感極まり身ぶるいし、


「~~~ッよっしゃーーーーー!!!!!!!!!!!!!」


 歓喜の雄叫びを上げる。


「ふう、長かった。本当に長かった。今回の命令は今までチビロリ魔王が出してきた命令の中でもトップクラスにめんどくさかった。だが、それももう後一歩だ。一番の鬼門だったスゴロクイベントに関するミッションは全て達成した。あと残るのは……」

 

そこで俺は手帳に目を落とす。


 そこに書かれているのは


ダンジョンマップ作製:サモン


 の文字だ。


「よし。それじゃ行ってみるか」


 高鳴る心臓と共に俺はダンジョン作成を行っているサモンの元へと足を運んだ。



エピソード⑲「ワープ&ワープ」


「おおー凄いな。流石サモンだ」


「ほっほっほっ。トウマ様にそう言っていただけますと老獪なりに頑張ったかいがありますな」


 俺は魔王城周辺地域が一望できる小高い丘の上で感嘆の声を上げる。


「このサモンも長く生きておりますが、ここまで多くの『ワープ』の魔法を使ったのは初めてです。とにかくうまくいってよかったです。ほっほっほッ」


 『ワープ』は決められた二つの場所を一瞬で行き来できるようにする魔法だ。そしてこの魔王城スゴロク化計画の肝となる魔法でもある。


 いくら人間がこのスゴロクダンジョンに興味を持っても、安全にダンジョンに辿り着くことが出来ないと意味がない。


 そもそも魔王城は魔界の中でも辺境の地にあるからここまで辿り着ける人間なんてほんの一握りだからな。


 だから『ワープ』で人間界と魔界の隔絶を行なっている結界の前とこの魔王城ダンジョンとを繋いでやる。


 こうすれば戦闘職じゃない人間も気軽に魔王城に来れるようになるってわけだ。


 そして俺の眼下には一体いくつあるのか見当もつかないほどのワープスポットが設置されている。


「ワープづくりが終わったってことは、残るはマップそのものの作成か。それもまた難所だな」


「ほっほっほ。その心配はいりません。実はトウマ様。このサモン、先日の暗黒竜の黒酒を手に入れるために旅に出た際、今回の計画にの肝となるアイテムをたまたま手に入れることができました。それがこちらです」


 そう言ってサモンが差し出してきたのは、見た事ものないようなMAPが描かれた古ぼけた地図だ。


 ただその地図が普通と違うのは古ぼけた地図の上にエメラルドグリーンに輝く宝石が浮いているということだ。


「これは古代秘宝アーティファクトか。ただ俺の知らない古代秘宝だ。一体どんな効果をもつんだ?」


「ほっほっほ。この古代秘宝の名は『神々の遊技デキウス・ボード』。かつて神々が遊び場を創る時に使ったとされるものです。ようは使用者が想像した遊技空間を作り出す力を持っております。さらに『神々の遊技』は使用者が決めたルールに同意したものにルールを強制させる力ももっております。この効力があればスゴロクで何か不正を行なおうとしたものがいたとしても強制的にその不正を打ち消す力が働いてくれます」


「今回の無茶ぶりにうってつけってわけだな。よく手に入れてくれたなサモン」


「ええ、このプロジェクトが決まった時に絶対に必要となると思いましてある程度入手の算段をたてていたのですよ」


「流石だな。まったく俺じゃなくてサモンが魔王軍№2をやればもうちょっとあのワガママ魔王の被害が少なくなるんじゃないのか」


「ほっほっほ。それはありえませんよ。魔王軍№2はトウマ様をおいて他におりません。トウマ様自身が相応しくないと思っていても、我々幹部は皆トウマ様以外に今の魔王様とうまくやれる方はいないと思っております」


「そうか? 俺は逆に全然そんなことは思ってないけどな」


「ほっほっほっ。そういったトウマ様の謙虚なところも我々は尊敬しておりますよ。そんなことより、このサモンにワープポイントの具体的な設置場所を指示くださっていたということは既に魔王城ダンジョンをどのようなマップにするかは決めておるのでしょう?」


「ああ、皆にアイディアを出してもらったあの日から考えに考えた珠玉のマップが俺の頭の中にある」


「では、そのマップを頭に描き空中に浮かぶ宝石に触れ魔力を込め起動コードを唱え『神々の遊技』を起動させてください」


「魔力はどの程度込めればいいんだ」


「なるべく多く込めてください。このアイテムはマップや遊技ルールを変える時にこの『神々の遊技』を起動するときに込めた以上の魔力を込めないと変更できない仕様となっております。逆に言うと少ししか魔力を込めずに起動すると、第三者がマップやルールを改変する可能性が出てきてしまいます」


「なるほどな。だったら全力でやろう。それで起動コードはなんなんだ?」


「起動コードは『天地創てんちそう』です。宝石に触れながら魔力を込め『天地創』と唱える。それが『神々の遊技』。の発動条件です」


 俺はサモンの言葉を聞き神々しく輝くエメラルドグリーンの宝石に手を置いた。


 そして、頭の中に新しい魔王城ダンジョンのマップを描く。


「いくぞ。ありったけをくれてやる【天地創】!!」


 その瞬間、世界をエメラルドの輝きが覆った、そして轟音が鳴り響く。


「ほっほっほ。素晴らしい」


 眩い光と轟音がやむとそこには俺の思い描いた世界が広がっていた。


 見渡す限りの草原のエリアに火山。怪しい建物に、七色のネオンが輝くBAR。更に宙に浮くサイコロ。


 どれもこれも俺がこのプロジェクトの間ずっと考え続けてきた理想のダンジョンマップだ。


「ついに、ついに完成だ。これが理想の魔王城ダンジョンだ!!」


 俺は眼前に広がる光景に絶叫した。


 これで残る下準備は残り一つだ。


 それが終わったらついに新魔王城が開演する。

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