第13話 美味しいご飯を求めて三千里
視界に移るのは一面の銀世界。大気を渦巻くブリザード。肌を刺すような凍てつく波動。
俺は今、寒冷地帯ブリザード・ヘッジホッグに来ている。
なんでこんな所に来ているのかというと、ブリザード・ヘッジホッグに生息しているアイスブルを捕獲するためだ。
アイスブルは寒冷地帯にのみ生息するウシ型の魔物で、油の乗った美味い肉が取れることで有名なのだが、その討伐難易度が高いため、魔界でもあまり流通していない高級食材となっている。
実をいうと本来なら魔王城で販売するのはもう少し安価な食材で出来るグルメのはずだったのだが、どうせなら美味いモノも提供しようという話になり、こいつを捕まえることになったのだ。
そういうわけで、こんな辺鄙な場所に来たんだが、俺一人で来たわけじゃない。
何故ならこのミッションの担当は俺の他にもう一人いるからだ。
「おおートウマ♪ 大分吹雪が強くなってきたね。そろそろアイスブルの群れとかに出くわすんじゃないかな♪」
こんな雪山の中でへそ出し衣装というクレイジーな格好をしている褐色少女リルだ。
そしてもちろんその相棒の伝説の幻獣ブリザード・フェンリルのシルバもいる。
なお、リルは休みの日は魔界中をシルバと一緒に旅していることが多い。
だから必然的に魔界の地理に詳しくなる。俺はこのブリザード・ヘッジホッグに来たことがなかったから、リルにどんな格好でくればいいのか聞いたところいつも通りで大丈夫とのことだった。
だから俺は素直に普段通りの恰好で来たのだが、正直に言って、寒い! めちゃめちゃ寒い!! 俺が魔族じゃなかったら一瞬で凍死するレベルだ。
寒冷地帯に入った瞬間にリルに文句をつけようと思ったが、流石に自分より圧倒的なまでな薄着で平然としているリルを見ると文句を言えない。
もしかすると、俺の身体が魔族の中でも特別寒さに弱いのかもしれないしな。
それにしても寒い!
シルバの背中に乗って移動していることもあり、冷たい風が肌で弾け、普通に雪山を歩く数倍の冷たさを感じる。
「ねぇ、トウマ。ずっと気になってたんだけど、もしかして寒いの?」
「ああ、寒い。だが、リルがそんな薄着で何も文句を言ってないのに俺が弱音を吐くわけにはいかないからな。気にしないでいいぞ」
「え? 私は普通に『ウォーム』の魔法使ってるからあったかいよ。トウマにも使ってあげようと思ったけど、トウマがいらないっていうならいっか♪ 」
『ウォーム』だと!?
瞬間、俺はリルの肩をがっしりと掴み
「すぐにその魔法をかけてくれ!」
俺は吹雪に負けない大声で叫び声を上げた。
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