第5話 冒険者の世界
この世界には人間の国々、魔族の国々が存在している。人間と魔族の人口比は三対一と言われ、二つの種族は昔から争いが絶えない。
争っているのは人間の国同士もだ。魔族同士の国も同様で、昔から戦争ばかり起こしている。
その人口比を補う為に、魔族達は魔物を購入し、自国の勢力圏に徘徊させている。魔物も好き勝手に移動するので、俺達人間の住む場所に現れる。
魔物を造り出しているのは、バタフシャーン一族と言う集団らしい。彼等は魔族、人間問わず魔物を売り込み、荒稼ぎしている。
魔物は貨幣を元に造られている。強い順に金貨級魔物。銀貨級魔物。銅貨級魔物だ。魔物を倒すと、魔物は姿が消失し貨幣に変わる
。
俺達人間の世界には、冒険者職業安定所と言う組織がある。略して冒職安という国の機関だ。そこに登録すると、冒職安が斡旋する仕事を受けられ、報酬を得る事が出来る。
冒険者は、レベルと言う強さを数値化した物を与えられ、そのレベル次第で仕事の難易度を決定する。
「······まあ大雑把に言うとこんな感じだ。何か質問はあるか?」
俺は大衆食堂のテーブルで、食後の緑茶を呑気に飲んでいる二人の子供に聞いた。
「おれ、今レベル幾つかな!?幾つになれば勇者になれんの?」
勇者志望らしいイバトが無駄に元気良く質問して来た。レベルは冒職安で測定出来るが
、まだ十五歳で登録出来ないイバトには無理な話だ。
因みにレベル四十以上の者を「練達の頂き
」と言う称号で讃えられる。これは、人間で言うと魔王と戦える実力に達した事を意味する。
「そっか!レベル四十になればいいんだ!」
いや、だからイバト。お前はそのレベルが計測出来ないんだよ。と、言うかレベル以前の問題だ。
勇者になれる確率なんて、俺から言わせれば奇跡みたいた物だ。恵まれた天賦の才。たゆまぬ努力。仲間との良縁。底知れぬ強運。
これらが備わって、初めて人は勇者と言う
奇跡の存在になれる。俺はそう思っている。
「おいイバト。お前、冒険者なんて生業、一体何歳まで続けられると思っている?」
俺は能天気なガキに、現実の一端を教えなくてはならないと考えた。
「え?知らないよそんな事。別に好きな歳までやればいいじゃん」
予想通りの考え無しの答えに、俺は意識的に、少し低い声を出した。
「冒険者が引退する平均年齢は四十歳と言われている。四十を過ぎると、仕事をしたくても冒職安で断られるケースが多くなる」
仕事を依頼する側も、絶頂期を過ぎた者より、若々しい者に頼みたい。年を取っても、
相当の実力者なら話は別だが。
「六割。この数字が分かるかクレイ?」
クレイは自分に質問が来るとは思わず、油断していたらしい「え?え?」と繰り返し動揺していた。
「冒険者が無事引退出来る数字だ。後の四割は命を落とす」
俺は世間知らずのガキ達に、冷酷な現実を伝えた。
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