第4話 世間知らずの子供達

 パーティを組むに当たって、メンバーの能力を知って置かなければならない。俺は眠そうにしているガキ達に簡潔に質問していった


「俺は剣が得意だよ!あと、よく足が早いって言われるかな。え?呪文?そんなの必要無いって!」


 イバトが得意げに自分の能力を話す。こいつは剣だけの単細胞タイプか。続いてクレアに質問する。


「エリクおじさんも見たでしょ!私は攻撃魔法が得意なの。とっくに遅いけど、今からでも褒めてもいいわよ」


 このガキの褒めてアピールを冷然と無視し

、俺は質問を続ける。


「火炎の呪文以外、何が使えるんだ?」


「え?そ、それは火炎とか、他には火炎とか

······かな」


 クレアは両手の人差し指を合せ、目を逸しながら答えた。要するに一種類だけしか使えないって事か。


 俺はため息をつきながら、今後の事を考えた。このガキ達は大して戦力にならない。ならば、それなりの依頼しか冒職安で受けられない。


 イバトとクレアの睡魔が限界の様子だったので、俺は一旦話を打ち切った。


「取り敢えずもう寝ろ。話はまた明日だ」


 イバトとクレアは大きく頷き、毛布を被り床に寝た。俺はこの部屋に一つしかないベットに腰掛け、今日一日の災厄を嘆きながら就寝した。


 


 翌朝、俺達三人は大衆食堂の店に入り、朝食を摂った。育ち盛りのせいか、イバトとクレアは勢い良くパンとスープを口に運んでいく。


「イバト、クレア。お前達は冒険者について

、どれ位の知識があるんだ?」


 俺はスープとパンくずを口の周りにつけた子供達に質問する。


「俺は勇者目指しているから、あんまり冒険者に興味ないんだよね」


 イバト。このガキは正真正銘の阿呆だ。その勇者とやらも冒険者の一人なんだよ。俺はもう一人の子供に望みを託した。


「ぼ、冒険者って、働かきもしないで、好き勝手に暮らしている輩でしょう?」


 ······駄目だ。こいつ等は完全に素人だ。俺は昨日から何度こぼしたか分からないため息をつき、この素人達に教えなければならなかった。


 冒険者の過酷な現実を。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る