第四話 駆け付けなければ!

「あれは…見たことある」

 あの鳥。いや鳥じゃない。式神だ。名前は知らないが陽一とかいう奴が持っていた。多分今困っていて、仲間を呼びに行っているのだろう。ということは[ルナゲリオ]は陽一を発見した、ということである。

 好恵は[ペテントス]に目をやる。まだ痺れている。あの小太刀を抜かない限り延々と電気が流れ続けるのだろう。だとしたら[ペテントス]は自力じゃ引っこ抜けない。

 ならすることは簡単である。今[イグルカン]で動けないように縛っている、式神を消せばいい。

 陶児の死体から札を取る。それを破いた。これで[ノスヲサ]とかいう式神は破壊される。当然[ペテントス]に刺さっている小太刀も消える。これで復活だ。

「[ペテントス]。さっきの鳥を捜しなさい。いや、空を飛ぶだけで十分ね。召喚士ならあんたの存在に間違いなく気付くから。反応する奴がいたら呼んで」

 陽一の残りの仲間も全員始末する。二人いる。陽一たちは自分の式神のことを知っている。特に[ルナゲリオ]は一番警戒しなければいけない式神だ。それを相手にさっきの二人だけで来るはずがない。今日来ないはずがない。

「今日で終わりにしてやるわ」


「あ、あレハ!」

 イワンが指差した先には鳥がいる。

「[ミルエル]! 久しぶりデス」

「イワン様ぁ。大変なの。陽一の馬鹿が…」

 その先は言われなくてもわかる。陽一が助けを呼んでいるのだ。すぐに向かわなくては!

「どっちなの鳥さん?」

「こっちよ…。何あれ!」

[ミルエル]が指す方向を見る。

「あんなにデカい蛾なんているの?」

「違いマス。あれは、[ペテントス]。雨宮の式神デス」

「ってことは、私たちを攻撃しに?」

「にしては高度が高すぎマス。あ、もう帰って行きまスヨ」

 今、バレずに攻撃できたはず。それなのにしないで帰って行く。[ペテントス]の不自然な行動。久姫は嫌な予感がした。

 スマートフォンをしまうと札を取り出し、式神を召喚しておく。雨宮に、もしくはいれば他の仲間に、自分が召喚士だとアピールしているようなものである。そんな危険を冒しながらも、久姫には召喚しなければいけない理由があった。

「早く行きましョウ」

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