第六話 陶児も…

 久姫が[ビペルンア]を撃破している間、[ノスヲサ]はずっと[ヤタガロウ]の攻撃を受け続けていた。

「ゲハハハッハハハ! 逃げるのもやめたの? その式神がかわいそうよ? 兜の下で泣いてるんじゃない?」

 菊子は陶児のことを煽る。だがそんなことに耳はかさない。

「…」

 あと少しだ。ほんの少し耐えるだけで勝てる。

「ククク…そろそろとどめをさしなさい、[ヤタガロウ]!」

[ヤタガロウ]は頷くと一旦距離を取った。ここから仕掛けてくるつもりだ。

 どんな攻撃を仕掛けてくるのか? どうやってそれを防ぐのか? 普通ならそれを考えなければいけない。だが陶児はそれらは考えていなかった。

「[ノスヲサ]」

 ただ一言だけかけた。

「ケッケッケ。最後の言葉はそれだけ? じゃあもうとどめをさしなさい!」

[ヤタガロウ]が向かってくる。[ノスヲサ]も刀を振りかざして防御する。突進してくる[ヤタガロウ]は刀を避けるために瞬間移動する。

[ノスヲサ]は防御しなかった。小太刀をある方向に向かって投げた。

 グサ。小太刀が刺さる。[ヤタガロウ]の胸に。

「な、何ですって?」

 信じられないものを見ているかのように菊子はそう言った。

「お前の式神…。一つ間違いがあったんだ。俺はそれを利用した。さっさととどめを刺せばよかったのになあ。攻撃のし過ぎだぜ。お蔭でどっちから攻めてくるのか、どこに瞬間移動するのか簡単に予想できた」

「こ、こんな偶然が…?」

「偶然じゃない。[ノスヲサ]は確実に未来の方向に向かって小太刀を投げた。そしてその未来は間違ってはいなかった!」

[ヤタガロウ]は小太刀を抜こうとするができない。小太刀に流れる電流のせいで痺れているからだ。

「ヤ、[ヤタガロウ]! 早く逃げなさい!」

 やっと抜き終わる。

「まさかもう勝ったとでも思ってるの? [ヤタガロウ]はまだ破壊されていない。小太刀を抜いてる暇に攻撃すれば良かったのに。あんたも式神も馬鹿ね」

[ノスヲサ]が[ヤタガロウ]に切りかかる。もちろん[ヤタガロウ]は瞬間移動で逃げる。が、[ノスヲサ]の刀は斜め左後ろに投げられていた。

「俺と[ノスヲサ]が馬鹿? 違うな。俺は[ヤタガロウ]が小太刀を抜き終わるまで待っていたんだ。自由に動ける時の方が、動きが制限されている時よりも[ヤタガロウ]の行動は推測しやすいからな!」

[ノスヲサ]の投げた刀は[ヤタガロウ]の首に命中した。[ヤタガロウ]の首が切り落とされる。

「そ、そんな馬鹿な!」

[ヤタガロウ]の体が崩れていく。

「言っただろう。未来の方向は見えている。お前の式神の力は強力だが、ワンパターンじゃ意味がない。式神を活かしきれてない!」

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