第二話 発想が悪魔
「あー講義だるい!」
「休みたい。いや、寝たい」
「俺はもう帰りたいぜ~」
講義室にいると他の学生が必ず言う言葉。単位は取れないけれど自主休講にすればいいのに。
「ねえ聞いた好恵?」
「なあに加奈?」
「もしなんだけど、教授が死んだら講義を履修している学生全員が単位を無条件で取れるんだって」
なるほど確かにもしもの話。勉強しないで単位が取れるならそれに越したことはない。
「じゃあ加奈が増尾教授殺すの?」
加奈はクススと笑った。
「まさか。そんなことしたら刑務所行きだよ。その前に退学だよ。あの教授、講義は全く面白くないのに試験問題だけ無駄に難しいじゃない? だからもしも、の話」
「へえそうなんだ」
普通ならこんな話はしても無意味だろう。でも自分は違う。[ルナゲリオ]なら簡単に人を殺せる。触るだけでいいし、式神は普通の人には見えない。
「とりあえずまあ、今日の講義は全部出ないとね。あの教授は出欠とるから」
「そうだね。じゃあ次の講義室に移ろっか」
この日の講義は午後のは履修していない。午前中の講義に出ると好恵は学食で昼を済ませて自分のアパートにすぐに戻った。
「今日言ッテタ増尾トカイウ奴ヲヤルノカ?」
「[ルナゲリオ]…。確かにあなたの力は凄い。でもね、場所をわきまえないといけないわ。講義中に死なれちゃ大変でしょう? 面倒なことが起きかねない。それにあいつらから無駄に警戒されるかも。特に空閑。あいつは私のことを良く思ってない。あいつが召喚士でなければさっさと殺してるんだけど」
パソコンを立ち上げた。そして岩大のホームページを開き、農学部のサイトにアクセスし、研究室のサイトに行く。
「流石にインターネット上に住所は無いか…。しょうがないわ[ルナゲリオ]。あなたが明日、増尾の家まで憑いて行きなさい」
「ソノ先デ殺スンダナ?」
家で死ぬ分には自分は怪しまれないが…。
「[ルナゲリオ]。あなたの駄目なところは心臓麻痺でしか人を殺せないところ」
「ショウガネエダロ魂ヲ連レテ行クトソウナッチマウンダカラ」
健康な人間が家で急死。ありえなくはないが、不自然と言われればそう考える人もいるだろう。
「明日増尾の家に行く。そしたらそこでは殺さないで週末の予定を聞いてきなさい。多分カレンダーとかに書いてあるはずよ。今日は水曜日。きっと土日の予定はもう決まっているはず」
「ジャア週末ニ殺スンダナ?」
「この土日に何か利用できる用事があればね。もしなかったら来週の頭にでも通勤時間中に殺してもらうわ。とにかくあなたは明日、土日の予定だけ聞いてきて」
「ワカッタ。任セロ。ドイツガ増尾カワカレバドコマデモツイテ行ケル」
「明日の一限目の講義の教授よ。すぐにわかるわ。何かいい用事があればいいんだけど」
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