第五話 繭子の式神
「この式神どうするの陽一? また[アズメノメ]みたいに従えるの?」
「これは繭子が見つけたんだ。繭子に持つ権利がある」
陽一は繭子の方を真剣に見つめる。
「繭子。君はたった今から召喚士になる。それが良いことか悪いことかはわからない。俺みたいに学校であまり友達ができないような結果が待ってるかもしれない。その時はこの式神は俺に寄こしてくれ。覚悟はあるかい? それと[アテラスマ]、お前も繭子の式神になることになる。そうすると一人歩きしてる時より自由が利かなくなる。それでも大丈夫かい?」
繭子と[アテラスマ]のそれぞれに確認を取る。
「うん。大丈夫。[アテラスマ]のおかげで私は目が見えるようになった。[アテラスマ]にお礼がしたいの。だからその、召喚士って言うのになる」
「私も繭子さんが主だと嬉しいです」
二人とも首を縦に振った。
「決まりだな」
陽一は繭子に式神について詳しく説明した。最初は良くわかっていなかったが、繭子は段々理解し始めてくれた。
「じゃあ戻したいときは札をかざせばいいのね?」
「ああ。今ここでやってみてくれ」
繭子は[アテラスマ]に札をかざす。すると[アテラスマ]は消える。
「成功だな。あとはさっきみたいに念じれば召喚できる」
「…つ、杖…」
繭子が急に杖を探し始めた。
「杖ならそこにあるだろう?」
「ど、どこに…?」
まさか…。見えないのか? さっきまで見えていたのに。
「繭子、[アテラスマ]を召喚しろ」
「わかった」
繭子が[アテラスマ]を召喚する。すると、
「ここにあったのね、杖!」
この式神の力、傷や障害を治すって言ったっけか。非常に便利だが召喚していないと障害の方は治らないみたいだな…。
「それより繭子。その紙はもうボロボロだ。汚いから新しいのに式神を移そう」
「そんなことできるの?」
する機会はないと思っていたが札の交換はできる。手順は式神を作る時と同じで、紙を用意してそれに式神の魂を宿して文字を書くだけ。
「せっかくだ。繭子がやってみなよ」
繭子に和紙と筆ペンを渡した。
「これに、[アテラスマ]って書けばいい。それだけだ。簡単だろう?」
繭子はなかなか手を動かさない。
「陽一…。アはどうやって書くの?」
ああ、そっか。繭子は点字の世界で生きてきた人だ。文字が書けなくたって不思議じゃない。
「じゃあ俺が代わりにやろう」
繭子から和紙と筆ペンを受け取って、自分で[アテラスマ]と書いた。そしてそれを[アテラスマ]にかざした。[アテラスマ]は新しい札の方に戻り、元の札はボロボロに崩れ去った。
「これでオーケー。今形式上[アテラスマ]は俺の式神だけど、式神の受け渡しには特に原則はないからこれを繭子に渡せばそれで終わりだ」
[アテラスマ]の札を繭子に渡した。今日やることはもうない。
「帰り、気を付けてな」
「うん、わかった。ありがとう陽一!」
繭子は嬉しそうに帰って行った。
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