第二話 彼の日常

 家に帰って来た。二階に上がって自分の部屋に行く。そしてテレビをつけ番組を観る。どれもあまり面白くないな。

「[ミルエル]。ここんとこのテレビは全く面白くない。これで金取ってるなら詐欺だ。腹立つレベルだぜ。そう思わないか?」

 陽一が話しかけた空間には誰もいない。人は、いない。

「そんなことよりぃ私をここから出しなさい!」

 クローゼットの扉にお札を貼ってある。その中から声がする。

 陽一はクローゼットを開けた。中には鳥が一羽いる。

「やっと出られたぁ!」

 鳥がそう喋る。

「いいや出さない。[ミルエル]、お前は何か忠誠心っていうのか…それが全く感じないぜ。少しは俺の言うことを聞けよ」

「誰があんたの式神になんてなるもんですか! 早くイワンの元に戻りたい」

 鳥はそう言う。でもちょっと間違いだ。正確には鳥ではない。

「おいお前…お前は俺がイワンから貰った式神だ。だから俺の言うことを聞くようになるまでここからは出さないぞ。札に戻れ…」

 鳥に和紙でできた札をかざす。するとその鳥は一瞬で消えた。

「貰って一年…まだまだ時間がかかりそうだな」

 ここまで手のかかる式神も初めてだ。これなら貰わない方が良かったのかも。でもイワンの方もコイツの扱いには困っていたし。どうすれば完全に従えることができるだろうか?

 シュルル、と廊下で音がする。陽一は部屋のドアを開けた。

「おお[ヤマチオロ]。帰って来たのか。今日はどこに行ってきたんだ?」

 目の前にいるのは二メートルぐらいある蛇。

「今日は北上川に行ってきたぜ。子供が水遊びしてた。溺れそうな子が一人いたから助けてやったぜ」

 蛇がそう答える。

「そうか。それはご苦労様。ゆっくり休め」

 今度はさっきと違う和紙でできた札を蛇にかざす。すると蛇も一瞬で消える。

「さて。飯まで暇だなあ。宿題でもやるか」

 机に向かったところでスマートフォンが鳴った。画面には五十嵐(小母)と表示されている。その電話にでる。

「もしもし五十嵐の小母さん?」

「あっ陽一君。今から大丈夫?」

 小母さんの話を聞く。

「繭子なら一人でも大丈夫だと思いますよ。小母さんは心配し過ぎですって。もういくつになると思ってるんですか?」

「それはそうだけど…あの子は…」

 この小母さんは一度心配したら止まらない。仕方なく話に従う。そして繭子の家に行く。

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