第六話

 もう夕方か。南の空に夕焼けが見える。

 結局、図書館に来ても何の情報も得られなかった。今日は駄目だ。

「せめて、夏が終わる前に見つけ出したいと思ってたが…。これが俺の限界なのか?」

 探偵事務所にでも駆け込もうか。でも警察と同じ反応をされたら意味がないし、依頼料なんて高そうでとても払えない。

「また明日頑張りましょう」

「そうだな」

 図書館を出て、警察署の前は通らないようにして家に帰る。

「おや?」

「どうかしたんですか?」

「家の前に誰かいるぞ。あれは…。警察だ!」

 玄関の前に確かにいる。幽霊ではない。それに見たことがある顔だ。

「あれは…。俺が最初に警察署に行こうとした時に話しかけた人だ」

「なんの用でしょうかね?」

 マリコが不思議に思う。

「話しかけてみるか…。どうする?」

 午前中に警察署で恥をかいたばかりである。だから気が引ける。

「あのぅ。どうしたんですか?」

 一応話しかけてみる。

「君が、小野寺翔気君かね?」

「はい。そうですが?」

 警官はニコっと笑って、

「それは良かった。追いかけようとしたんだが、もう帰ってしまったんじゃないかと思ってね。ここで待っていたんだよ」

「それはそうと、何の用ですか?」

「君は、取調室で言ったそうじゃないか。この県で殺人事件が起きていると」

 ひょっとしてこの人は、自分の言っていることを理解してくれた…? 良かった警察の中にも、話がわかる人がいてくれた! 翔気は思わずガッツポーズをした。

「そのことで、君と話がしたくてね。ちょっといいかな?」

 話を聞いてくれれば、きっと捜査もしてくれる。だが、今日はもう遅い。

「今日は遠慮しますよ。お腹も減ったし。明日、また警察署に行きますから、その時でいいですよ」

 そう言うと警官は鋭い目つきで、

「今日じゃないと困るんだよ」

 と言った。

「えっ何で…」

 言っている最中にバチバチっと体に電撃が走る。

「つべこべ言わずに来なさい」

 今の一撃で、翔気は気を失った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る