第五話

 あっちからやってくるとは。思いもしなかった。調書を読む。

「小野寺翔気、高校二年、十六歳か…」

 調書には住所も書いてある。探す手間が省けた。携帯の電話番号やメールアドレスも書いてある。

「どれどれ…。尾形麻理子の遺体の第一発見者で、気になったから掘ってみたら遺体を見つけたと言い張る…。他にも変な言動が多くみられ、行方不明者が誰かに殺されていると主張。前半の発言は事実でも、後半はいたずらの可能性が大…」

 普通なら後半の発言は誰もが笑い飛ばすだろう。だが私は違う。彼の言っていることは本当だ。長年殺してきた自分だからこそわかる。

 何やらこの少年は、結構事件のことを調べているようだな。尾形麻理子のことだけじゃなく、他の事件にも注目しているらしい。

「小野寺翔気君…。君は早めに消した方が良さそうだね…。私の邪魔をする者は誰であろうと消えてもらう…」

 部下に聞く。

「で、この調書にある少年はもう、帰したのかい?」

「はい。帰りました。でも何度見ても笑える調書ですよ。この少年、精神鑑定が必要なんじゃないですか?」

 部下は笑いながら言う。

「そうかもね…」

 とだけ返す。

「ところで、私はこれから用事があるんだ。先に帰らせてもらうよ。この仕事、少ないからやっておいてくれないかな?」

「わかりました。大丈夫ですよ。用事って何ですか?」

「何でもない。本当に詰まらない用さ。でもすぐに解決しないといけないんだ」

 ロッカーに来た。本来なら着替えて帰るが、少年と会うのは制服の方がいいだろう。ロッカーから、常に入れっぱなしのスタンガンを取り出す。

「まさか…。これを使う日が来るとは思ってもみなかったよ」

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