第四話
「…」
翔気は平和記念公園のベンチに座っていた。暑いのでスポーツドリンクを飲む。
「…アレは失敗だったな…」
さっき警察署から出てきたばかりだ。緊張していて、ついさっきのことなのにほとんど覚えていない。
「翔気君は頑張った方ですよ。信じようとしない、警察の方がいけないんです」
マリコがフォローしてくれた。でも、過ぎてしまったことはもう、後戻りできない。
「僕が尾形麻理子さんの遺体を発見しました。そして通報しまし」
取調室でまず最初にそう言った。
「どのようにして、発見したの?」
そう聞かれた。
「そこに、何か、埋まっているような気がして…」
そう言うと警官は首を傾げて自分を白い目で見た。
「いや、その、野生の勘、と言いますか…。あの場所を掘ってみようかなと…」
テンパってしまい、そんなことを言った。
「何か、あるのかなあって思いまして…。カブトムシとか、いないかなって思ったんですよ」
まさか自分がカブトムシ作戦を口走ることになるとは…。
「そしたら、発見したんです。別に僕が、遺体をどこからか運んできたとかいう、わけではありません。麻理子さんとも無関係です。頭蓋骨を掘り出したら遺体とわかったんです。そしたらもう、怖くなって警察に通報しようと思って、それで、公衆電話で通報して…」
もう滅茶苦茶だった。自分で何を言っているか、わかってなかった。しかもその後、
「この広島県で、行方不明事件が数多く起こっているんです」
これは本当に余計だった。
「毎年、一人ずつ、若い女性が失踪しているんです。誰かが犯人で、殺しを行ってるんです」
もう思い出すだけ恥ずかしい。
警察は自分のことをどう対処していいのか戸惑っていたし、怪しんでもいた。精神異常者と思われたかもしれない。
「きっと警察の中にもわかってくれる人はいますよ」
「だといいんだけど…。取調室にいた警官のうち一人は絶対に、いたずらとしか思っていないような顔だったぜ。ありゃあ駄目だな」
もう警察を頼ることはできそうにない。
「やっぱり俺は、自分の力で犯人を捜すよ。もう一度、調べなおしだ。この夏休み中に見つかるといいんだが…」
「見つけましょうよ。私も最大限、協力します!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます