第八話 俺という人

 数日後、ブラッドは本国に戻って来た。そして家に帰った。

「お帰り。思ったよりも早かったわね」

「ただいまエイミー。苦戦はしたが、不思議なことがあってね」

「へえ。どんな?」

 エイミーに説明する前にブラッドたちは荷物を片付け、シャワーを浴びた。そして一段落したところで、テラスで猟犬たちを見ながら話をする。

「…本当にそんなことが?」

「ああ。今でも俺は信じられないけどな、本当だ。あれがなければ今頃死んでるさ。本当に助かったよ」

 今回の任務は今まで以上に命の危険を感じた。

「でも、本当に存在したかどうかは説明できない。一度しか聖域には入ってないし、出ると何も見えなかった。何度も地図を確認したよ。できる限り古い奴も全部。でもどこにも記載されてはいなかった」

「私も行ってみたかったな」

「もう行けないよ。あの後、アダムス中尉は森の獣に恩返しをしようと餌を用意して、航空機で何度も探したが、見つからなかった。グラディーの機械も反応なしだ。未だに探しているらしいが、きっと見つからないだろうな、永遠に」

 椅子から立ち上がって庭に出た。完璧に訓練された猟犬がブラッドに反応して向かってきた。ブラッドは一匹一匹撫でてやる。

「もしさあ」

 エイミーが始めた。

「ん? 何だ?」

「もしブラッドが動物に興味のない冷血な人だったら、その獣は部隊を助けたのかねぇ?」

 ブラッドは一考した。ちょっと興味深い話である。だが答えは簡単だった。

「助けたさ」

「何でそんなことわかるのよ?」

 ブラッドは言った。

「だって、俺は動物に興味があるし、愛情を注いで育てている」

 エイミーの言うような俺は存在しない。森の獣が教えてくれたことだ。

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